こんにちは
今年のプロ野球も佳境を迎えているわけですが、1つ気になることがあります。
それは「WBC参加した若手投手の苦しんでる率高くない?」ということです。
当然例外もありますし、ある程度キャリアのある投手は問題なく活躍していることが多いですが、例えば昨年の新人王である大勢投手やその大勢投手と新人王争いを繰り広げた湯浅選手などです。
とはいえこれはあくまで自分の主観なのかもしれない、と考えたので2006年大会から2023年大会までの歴代侍ジャパンにおいて若手投手たちが翌年どのような成績を残したのかをまとめていきたいと思います。
ここで一つ、「若手投手」の定義を決めます。
それは
先発:規定投球回に到達した回数が1回ないしは0回の投手。
リリーフ:40試合以上登板したシーズンが1年ないしは0年の投手。
です。
つまりオリックスの宮城投手(22)はこの記事においては若手投手の枠から外れます。
ではなぜ年齢で区切るのではなく複数シーズンの活躍の有無を基準にしたかというと、1年だけ活躍した場合、シーズンの疲労を抜いたうえで翌シーズンに向けて調整するということをちゃんとやれないまま、自分自身の調整法も確立できないまま、3月のWBCに向けて身体を急ピッチで仕上げないと行けなくなります。
そのため、上記の条件に設定しました。
それでは2006年大会から見ていきます。
2006年大会投手メンバー
※黄色く塗りつぶしている投手が、若手投手になります。
藤川球児投手
2005 80試合7勝1敗46H1S 1.36
2006 63試合5勝0敗30H17S 0.68
こうしてみるとクオリティとしては全く落ちていないと言えますね。
何より2005年にあれだけ投げてWBCにも駆り出された翌年に平然とこれをやるのが恐ろしい限りです。
久保田智之投手
2005 68試合5勝4敗3H27S 2.12
2006 47試合5勝7敗2H16S 3.96
前年に比べると落ち込みましたが、なによりシーズン中にベビーカーから落ちそうになった娘をかばった際に右手の甲を地面に強く打ちつけて骨折*1
WBCの疲労とは全く異なる場面での負傷ではあるため、WBCの影響はどうなのか分かりません。
なおその後、アンタッチャブル(であってくれ)レコードの90試合登板を樹立しました。
馬原孝浩投手
2005 42試合6勝6敗2H22S 3.08
2006 51試合0勝4敗1H29S 1.65
大会中に負傷離脱した石井弘寿投手の代役として招集されました。
2005年の成績だけ見ると代表として相応しい成績か微妙なところはありましたが、急遽の招集となったこともあり王監督が自チームであるホークスから選んだのではないかと憶測します。
馬原投手は緊急招集ながらその後のシーズンでは前年より遥かに良い数字を残しており、WBCのマイナス影響などなかったと言えます。
総評
2006大会は当時ナンバーワン左腕リリーバーの石井弘寿投手がキャリアを終わらせてしまった大会ではありましたが、若手投手にとってはそこまで悪い影響はなかったと言えます。
2009年大会投手メンバー
※黄色く塗りつぶしている投手が、若手投手になります。
岩田稔投手
2008 27試合10勝10敗101奪三振 3.28
2009 16試合7勝5敗103奪三振 2.68
内容、質そのものは決して落ちてはいませんが、大会中から肩のコンディションに不安があったということでフルシーズンの完走は出来ませんでした。
WBCがなければタイトル争いに食い込んでいたかもしれませんがそればかりはわかりません。
小松聖投手
2008 36試合15勝3敗151奪三振 2.51
2009 17試合1勝9敗74奪三振 7.09
WBCで行方不明になってしまった若手投手の代表格といえるのがこの人でしょう。
前年に大ブレイクを果たし、新人王に輝いた小松投手でしたがこの年を最後に輝くことはありませんでした。
山口鉄也投手
2008 67試合11勝2敗23H2S 2.32
2009 73試合9勝1敗35H4S 1.27
前年大ブレイクを果たした初代"育成の星"でしたが、WBC後も全く落ちることなく投げ続け、前年以上のパフォーマンスを見せつけました。
この後も長らく巨人のブルペンを支え続け、原巨人の黄金期を代表する一人となりました。
総評
小松投手の印象は強いですが、山口投手は影響がなく、岩田投手も量的貢献はともかく質的貢献は前年以上とも言えます。
前回大会も踏まえると、「若い投手への影響はあまり大きくなかった」と言えるかもしれません。
2013年大会投手メンバー
※若手投手はいませんでした。
2017年大会投手メンバー
※若手投手はいませんでした。
2023年大会投手メンバー
※黄色く塗りつぶしている投手が、若手投手になります。
また、成績は2023年8月28日段階になります。
佐々木朗希投手
2022 20試合9勝4敗173奪三振 2.02
2023 13試合7勝2敗130奪三振 1.48
前年に完全試合を達成するなど、NPB最強投手の一人として名をはせましたがキャリアで規定投球回を投げたことは無く規格外の出力を安定して出すにはまだ身体が出来上がっていないとみられていましたが、天井の高さを見込まれて代表入り。
WBC明けもとてつもない勢いで三振を積み重ね、素晴らしいパフォーマンスでしたが通年持つことができずに離脱してしまいました。
大勢投手
2022 57試合1勝3敗8H37S 2.05
2023 24試合2勝0敗1H14S 3.00
前年は巨人軍の絶対的な抑えとして新人王に輝きましたが、今期はコンディション不良もあり現在は二軍で調整中。
「勝利の方程式=大勢」というくらい他の投手が不安定な中で孤軍奮闘していました。
特に他の投手と異なり、実質1年目とかではなく本当にプロ1年目での選出だったため特に調整法などでは苦労したのではないかと思います。
湯浅京己投手
2022 59試合1勝3敗43H0S 1.09
2023 15試合0勝2敗3H8S 4.40
スアレス投手の穴を埋めた通称”ユアレス”こと湯浅投手も昨シーズンの圧倒的なパフォーマンスから一転、コンディションに苦しみ現在も一軍に帯同していません。
開幕当初はそれなりに投げていましたが球の勢いが昨年ほどなかったため、その頃からコンディションは怪しかったのかもしれません。
層の厚い阪神の救援陣を考えると今年無理をさせる必要もないのでこのまま今シーズンは調整で終わるかもしれません。
宇田川優希投手
2022 19試合2勝1敗3H0S 0.81
2023 33試合3勝0敗13H2S 2.23
個人的には一番のサプライズでした。昨年夏ごろに支配下登録された育成出身の右腕ですが、特にポストシーズンで圧巻の投球を見せつけて「宇田川優希」の名を世間に知ら閉めました。
ただ実質プロでは半年しか実績がないようなものでなんなら新人王資格すら残っている状態だったので代表入りは驚きましたし、やはり今年も一時期調子を崩していましたが今は調子を取り戻して躍動しています。
高橋宏斗投手
2022 19試合6勝7敗134奪三振 2.47
2023 20試合5勝8敗123奪三振 2.36
勝敗こそパッとしない数字ですが、実際の内容は極めてよく、力強いボールで三振を量産するセ・リーグの若手ナンバーワン投手といっても過言ではありませんでした。
規定投球回に到達したことがなく、なおかつ高卒2年目での大会参加ということで不安視していましたが現状何の問題もなくローテを守り、イニング消化をしていますし、奪三振はタイトル争いに加わっています。
援護はありません。
高橋奎二投手
2022 17試合8勝2敗113奪三振 2.63
2023 16試合4勝7敗76奪三振 4.69
この投手は他の若手投手と違ってキャリアは長いですがフルシーズン完走した経験がなく、中6日のローテを1年間守り抜いたことがないのですが高津監督によるややゆとりをもった起用法で連覇に貢献。
1試合単位で見ると好調時の球は球界最高級ですが、この投手の問題点は1年間継続しないことで今年はまさしく不調の波の呑まれ、かつスタミナのなさを露呈してしまう結果となりました。
もしかすると本来ならWBCに参加せず、シーズンを完走することを念頭に置いて調整に専念すべきだったのかもしれません。
山崎颯一郎投手
2022 15試合0勝2敗6H1S 3.00
2023 45試合0勝0敗26H6S 1.21
アメリカラウンド直前に離脱した栗林投手の代わりに呼ばれましたが登板はありませんでした。
同期の山本由伸投手からもアメリカ旅行と揶揄されていましたが、呼ばれる想定で準備するわけではなく、普通に開幕に向けて調整していたのが功を奏したのかこれまでのシーズンと比べてもキャリアハイの成績を残しています。
あまり参考にはならなそうではあります。
総評
過去大会と比較すると、前年からの活躍を継続ないしはステップアップできた投手は少ないため、私は当初「まだ調整が確立されていない若手投手をWBCに連れて行くのは悪影響ではないか」と考えていましたが過去の事例だとあまり関連性がありませんでした。
個人的に思ったのは近年の高速化の流れで身体的に負担がより大きくかかっているため、シーズンでの疲労や消耗がこれまでより大きくなっています。
そのためオフの重要性がより増しているわけですが、そこでオフが取れなかったり難しい調整を強いられた若い投手たちが苦しんだのではないかと推測しています。
結論
これまで以上に若い投手の負担が増えるため、今までよりももっと慎重に投手選考をしていかないと選手たちのキャリアにとってマイナスになるリスクは高まった
と言えます。
これまでではなくこれからを見据えて。