こんにちは
今年もまた、日本人Jリーガーが安価でホイホイ海外に移籍する季節がやってきました。
かつて、それこそ10年ちょっと前なんかはJリーグの中のトップオブトップくらいしか欧州移籍する風潮はありませんでした。
遠藤保仁選手や中村憲剛氏、中澤佑二氏などはJリーグでとてつもない試合数を記録していますが、そもそも彼らクラスの選手であっても基本的に国内にとどまってキャリアを全うするのが普通の時代でした。
しかし現在だと、例えばドイツで活躍している堂安選手やオランダで活躍している菅原選手、オーストリアで活躍する中村選手などはJリーグでは殆ど何の実績もないまま渡欧しました。
今夏移籍が決まった選手に関しても、伊藤選手は代表歴がなくJ1で主力として活躍したのは今期のみ。
小川選手は世代別では常連でしたが怪我もあり中々上で定着できず、代表歴も東京五輪組を多く集めたE-1で1回あるのみです。
町野選手はもっとも実績はありますが、さりとてフルシーズン活躍したのは昨年のみで、ワールドカップメンバーとは言いますが試合に出ることなく終わったので国内のトップオブトップかと言われると疑問です。*1
山本選手に至っては世代別でしか実績がなく、昨夏加入したガンバではほぼ何もしていないようなものです。
行先もかつては5大リーグに直接移籍することも珍しくありませんでしたが、今は2部リーグやベルギー、オーストリアといったステップアップリーグに多数行っている印象です。*2
そして私が何より気になっているのは「移籍金の安さ」です。
冷静に考えてほしいんですけど、チームの主軸ないしはプロスペクトを数千万円前後~よくて2億円で手放すって痛すぎませんか?*3
抜けた主軸の穴埋めをするための補強費にならなくないですか?
ただこれを「安く売るチームなんて愚かだ」と言い切れない側面はあります。
また、古橋選手の高額移籍金を例に「選手の個人戦術を鍛えて付加価値を付けたら高く売れる。」と宣っている脳内お花畑で自分自身の市場価値は0円の神戸サポもいますが、古橋選手よりはるかに価値のある三笘選手が古橋選手の半額以下、もっと言うと今後日本サッカー史に残るであろう史上最高のアンカー守田選手に至っては0円移籍です。
すなわち日本人選手の移籍金の安さ、お金の取れなさは基本的に市場価値の問題ではなく契約の問題であると考えるのが自然でしょう。
ではクラブは何故そんな契約を結ばないといけないのか、また選手は何故そう言う選択をするのかというところを考察していきたいと思います。
クラブ側の言い分
・選手の海外オファーを固くプロテクトしたら今後有力な選手に来てもらえなくなる。
これに尽きるでしょう。
今の選手で欧州志向のない選手などほぼいないです。
考えてもらいたいのが、みんな明日どうなるかも分からないサッカー選手というリスク満点の仕事を平然と選択できる選手たちです。特に若いうちは安定志向なわけないんですよね。
自前のユース卒とベテランだけでチームを編成するつもりなのであれば考慮しなくてもいいかもしれませんが大半のチームはそんなことするわけにはいかないでしょう。
新卒選手や他クラブの有力若手、中堅選手の多くは基本的にJリーグを「腰掛け」として考えていても不思議ではありません。
そうなった時に欧州移籍の可能性を契約で縛ってしまうチームを選択する可能性は高くないのではないでしょうか。*4
チームを作るためには欧州に安く行かれるリスクを飲み込んで契約してでも必要な選手を取る、それだけなのだと思います。
選手側の言い分
・明日どうなるともわからない仕事なだけにクラブへの義理を必要以上に意識する場合じゃない
・そもそも年俸も安い
・自分のキャリアを考えたときに代表入りという大目標を達成するにはほぼ間違いなく欧州でプレーしなければならない
1つ目と2つ目はちょっと繋がっている部分もありますが、いつどうなるか分からない仕事である以上お金から目を背けるわけにはいきません。
そもそも契約ごとである以上年俸が高ければその分移籍金も高くなりますし逆もしかりでしょう。
根本的にJリーグの年俸は一部クラブ、一部選手を除けばあまりに安いと思います。
じゃあどうすればええねんまでは考えていないのでそこはご容赦いただきたいのですが、今の倍、3倍くらい払えるリーグになってほしいですしなるべきではないかと私は考えています。
またお金とは別の側面で、今の日本代表はほぼ欧州組で構成されます。
国内組は本当に旬な一部選手を見るくらいで、基本的に森保監督の視野には入っていないでしょう。
自身のキャリアを考えたときに代表で活躍したいと思う選手も多いでしょうし、代表への思いが強くなくとも今後のステップアップを見据えたときにそれなりの代表歴を持っておきたい、そのためには代表に呼ばれないといけないため、国内から欧州へ移籍しようと考えるのは自然な事でしょう。
これからどう向き合っていくべき?
長い目で見れば
・徐々にでいいので選手への金払いが良くなれるように稼ぐ
これでしっかりと選手に年俸を払うことです。
ここはもう自分から言えることは無いので各クラブそしてリーグが頑張ってほしいとそれに尽きます。
そして
・欧州移籍のサイクルを踏まえたうえで編成をする
ここだと思います。
例えば今30歳前後の選手であれば欧州移籍を志すことはほぼありません。*5
そのくらいの年齢であれば3,4年ほどは戦力として計算できるでしょう。
そのくらいのベテランに差し掛かりつつある選手、また自身の安売りを望まない外国籍選手*6を中心に据える。
また、2~3年ほどのスパンで売ることも想定した期待株を数人保有して、手放すタイミングでまた新たな期待株を獲得して戦力を極端に落とさないようにする。
そして言い方は良くないですが、欧州や代表は少し難しそうだがJ1主力にはなれそうな選手を上手く活用する。
こうやってチーム力を維持しながらサイクルを回していくことでちょっとくらいの欧州移籍じゃ揺るがないチームのベースを作る。
それが必要かなと私は考えます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
*1:今期も9得点ですがうち4得点がPK、4得点が1試合で固め取りしたものなので見た目以上に活躍度はピンとこないかもしれません。
*2:この辺の変遷については今回書く気はありません。
*3:契約がこじれて0円で出すよりマシっていう考えはあるかもしれませんが
*4:例えばヴィッセル神戸は2021年に古橋選手をセルティックに£4.5mで売りましたが、この2年前にAZとフローニンゲンのオファー
【神戸】FW古橋亨梧にオランダの2クラブがオファー : スポーツ報知
をクラブ主導で断っています。このことからヴィッセルは欧州移籍に積極的に後押ししてくれないクラブだと選手・代理人側に認知されたのか、その後は他クラブの有力な若手中堅はほぼ獲得できていません。ちなみに齊藤未月選手はあくまでレンタルです。私の見立てが間違っていなければ彼もヴィッセルに完全移籍することは無いでしょう。