夢から醒めたあと

こんにちは

今回サッカーのことを語ります。

誠に勝手ながら応援させていただいている横浜Fマリノスについての内容となります。

複雑な感情が入り混じっており、文章としてどこまで伝えきることが出来るか分かりませんが、できる限りの努力は作ります。

もしよろしければお読みいただけると幸いです。

 

まずもって今回、チームとしての調子やそれについてどう感じているかを語る気はありません。

シンプルに今回は宮市亮選手について書きたいと思いました。

 

シーズン開幕前のACLから多くの決定機を外してしまっていること、オープンなスペースのある展開でないと基本的に仕事を果たせない特質、プレースタイルが相俟って現状大きな批判に晒されています。

基本的なスタンスとして、私は「プロの選手である以上第三者からプレーの評論を受けることは仕方ないもの」と思っています。

当然誹謗中傷は論外ですが、批判と誹謗中傷に大きな差があり、前者は誰がやっても問題ないことだと私は認識しています。

むしろ批判すらされない選手というのは全てが完璧な選手かもしくは引退する選手くらいでしょう。

引退試合でプレー批判するのはさすがにナンセンスですからね。

 

ただ、宮市選手に関しては存在が特殊ゆえにちょっと難しいところはあります。

 

簡単に宮市選手のキャリアを振り返ると中京大中京高校卒業後、プロを経由せず即渡欧。

名門アーセナルと契約し、欧州クラブでもその爆発的なスピードを武器に躍動していました。

実際そのころの宮市選手に夢を見たサッカーファンはかなり多いのではないかと思います。

何を隠そう私だってその一人です。

今でもたまにこすられますが、ウィガン時代に当時プレミア屈指のDFとして名をはせていたイバノビッチ選手(当時チェルシー所属)を圧倒的なスピードでぶち抜いたシーンは衝撃的でした。

しかし、怪我が多く、しかも軽い怪我ではなく長期離脱につながる膝の怪我を頻繁に起こしてしまったことで欧州のトップシーンで活躍する姿はほとんど見られなくなりました。

そんな中、2021年当時ドイツ2部でプレーしていた宮市選手をマリノスが獲得するという事を知り私は驚きました。

そもそも頭の片隅からも消えかけていたかつてのカルトヒーローが自分の応援するクラブに来るという事、また宮市選手に目をつけていた強化部にもです。

 

ですが、2021年夏から加入した宮市選手はコンディションの問題もありほとんどベールを脱がないまま最初の半年を終えました。

この時はプレーを見てすらいないので期待を持つ持たないより「宮市って実在するの?」みたいなツチノコ的な感覚で見ていた自分がいます。

 

そしてキャリアが大きく変わった2022年。

この年は最初からある程度試合に絡むことが増え、当時の集中開催スタイルのACLに伴う過密日程と相俟って「とりあえず身体が動く選手は試合に出る」という状況でしたが、春先の宮市選手は今一つパッとしませんでした。

今も言われている「クロスの質」や「スペースがないときの働きの質」はこの頃も言われていた印象はあります。

ですが、初夏のあたりから急にプレーが洗練され、ゴールとアシストを量産しだします。

2022年5月18日の浦和戦から2022年7月6日の広島戦までの7試合で3ゴール3アシストというとてつもないペースで得点関与し、その年開催されたE-1の日本代表にも選出されました。

その頃もスペースがないときの動きは不得意でしたが、スペースがあるときは水を得た魚のように躍動し、クロスもある程度の精度があり*1、得点も決めるという理想的なスピードアタッカーでした。

彼にとっても10年ぶりの代表復帰という事もあり、私も嬉しく思いましたしきっとチームメイトや監督スタッフも同じ気持ちだったでしょう。

ですがそのE-1の韓国戦において、彼はまたも膝の大怪我を負います。

チームは一致団結し、最終的に2022年はリーグ優勝を果たすことが出来ました。

宮市選手がシャーレを掲げている姿を私は現地で見ましたが、「感無量」の一言でした。

そして多くのファンサポーターの期待を背負い、リハビリも完了した宮市選手がピッチに戻ってきたのが2023年の初夏。

怪我明けであること、もとよりプレーヤーとしての性能が尖っていることを考えるとどこまで貢献できるか不安はあったものの、2023年6月10日の柏戦でATに逆転弾を放ち「宮市亮ここにあり」を見せつけてくれました。

ですがその後は精彩を欠くプレーが続きました。

クロスは明後日の方向に飛んでいき、シュートは枠外ばかり、プレスもとても理知的とはいえずチームにとって利潤をもたらしているとは到底言えないパフォーマンスでした。

正直に言うと私はしんどかったです。多分しんどいと感じた方は少なくはないでしょう。

それは宮市選手のパフォーマンスが悪いからというだけではありません。

あの時夢を見せてくれたスーパーヒーローの無残な姿、そしてその無残なパフォーマンスによってチームにデバフをかけてしまっている事実がしんどかったです。

一人一人の選手を応援すると同時に、クラブを応援している中で、試合に出るだけでクラブを苦境に立たせてしまう選手を私は直視したくなかったです。

ですが、そうはいってもチームの一員である以上宮市選手が試合に出るのならゴールを決めてほしいしアシストを決めてほしい、一人でも多くの相手選手をぶち抜いてほしいと願いながら試合は見続けていました。

 

もちろん怪我明けだったことを思うと、簡単にトップフォームを取り戻せないのは当然です。若手じゃないのですから猶更です。

ただ、シーズン終盤までずっと苦しいパフォーマンスが続いたのは紛れもない事実ではありました。

そんな苦しい2023年を経て、私はオフシーズンに宮市選手が移籍するのではないかとチラッと思いました。

それはマリノスというクラブが「選手ファースト」で選手を送り出しており、例えば今FC東京でプレーしている仲川選手やセレッソ大阪でプレーしているレオセアラ選手などは、実力はあれど出場機会が限られてしまうこともあり、チームとしては必要戦力ではあったものの移籍という選択を決断したことを止めなかった経緯があったため、苦しいシーズンを過ごした宮市選手が違うクラブで再起をかけたいと思うのではないか、またそれをクラブは無理に引き留めることもしないのではないかと思っていたのです。

そうなっていたとしても私はクラブを責めることはなかったと思いますし、むしろ「選手ファースト」という事であればいい別れ方じゃないかもしれないけど宮市選手とは道を違えたとしてもそれは仕方のないこと、と思っていました。

 

ですが宮市選手は2024年もマリノスでプレーすることになりました。

 

そして今に至るわけですが、やはり厳しい状況が続いています。

例えば宮市選手じゃない違う選手が同じようなパフォーマンスであればもっと非難されていたかもしれませんが、宮市選手は先述の経緯もあるので、どうしても擁護したいと思う方が出てくるのは無理もありません。

大変言いにくいですが、彼のプレーの"質"そのものがマリノスの水準に達していないと私は思っていますが、それでもまだまだ期待したい、ヒーローが甦る姿を見たいという人の気持ちは痛いほどわかります。

ですが、宮市選手を本当にプロ選手としてリスペクトしているのであれば、汚い言葉で罵るでもなく、無理筋な擁護をゴリ押すわけでもなく、それぞれの言葉で真剣に語るべきなのです。

私たちは宮市選手をあまりに「あの頃のスーパーヒーロー」そして「怪我に泣かされ続けた悲劇のヒーロー」として見すぎているのではないか、と思います。

正直言うとその見方を完全に取っ払うのは難しいのですが、それでも今の宮市選手を語る上ではノイズでしかありません。

今必要なのは「現在31歳のウインガー」という情報だけです。

 

どういったプレーが出来ていて、どういったプレーが出来ないのか。

またマリノスが求めるプレー水準を満たすことが出来ているのか。

そもそもマリノスがどういうチームで何を目標にしているか、も含まれるかもしれませんね。

「現在31歳のウインガーとして見たときに満足できますか?

そして、マリノスが求める目標達成のために彼の存在がプラスになりますか?

というところだけに絞って話すのがいいと思います。

 

個人的には今の宮市選手にそれを求めるのは酷だと考えています。

そして宮市選手に、あの頃のスーパーヒーローに必要なのはマリノスで苦しんで苦しんでパフォーマンスを出せないで晒し者になることではなく、自らの実力と合致したリーグ、クラブで輝くことです。

選手ファーストは本来そのはずのものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

なんで突発的にこんな記事書こうと思ったかというと、試合のたびに宮市選手についての議論がなされていますが、かたや「全擁護」かたや「全否定」と両極端な意見が多くみられてうんざりしたので、思考の整理のためにしました。

「宮市選手の成長に期待すべき」という意見や「宮市選手に期待しすぎるほうが間違い」という意見は一見宮市選手を擁護しているようでただ彼を貶めているだけにしか見えませんでした。

リスペクトを持つことは果たしてそういう事なのか、というのはずっと思っていることですが…

 

*1:なければあんなペースでアシストできません