こんにちは
マリノスウォッチャーです。
キューウェル前監督解任以降、公式戦4試合3勝1敗とまずまずの結果を残しているわけですが、少なくないマリノスサポーター諸兄は内容に満足はしていないでしょう。
私もその一人ですが、まずもって現状の編成事情があまりに苦しいこと、それでいて積極的に夏に動く理由もないため今夏編成に大きな変革を期待できないことを踏まえて現状を仕方なしに飲み込んでいます。
シンプルに言うと
「ジョン・ハッチンソン暫定監督を正式に監督に就任させるのはあり得ない。」
というのが私の考えです。
本記事では大きく以下の5部構成に分けて書いていけたらと思います。
1:2023年のマリノスが直面したこと
2:2024年シーズンにハリー・キューウェル前監督がやろうとしたこと
3:キューウェル前監督が出来なかった理由とキューウェル前監督の評価
4:現状のチーム
5:今後の提言
1:2023年のマリノスが直面したこと
結果云々については触れる気はありません。
どちらかというと、2023年のマスカットマリノスがどのような状態にあったのかについて書いていきたいと思います。
結論から言うと1年間ずーっと通して苦しい内容続きでした。
2位になったのはマスカット元監督の運用が上手かったこと、一部選手の能力を超えた頑張り、そして他クラブがそこまで仕上がり切っていないレベルの高く無いシーズンだったことが挙げられます。
2023年マリノス、覚えている人がどれだけいるかは分かりませんが最初は相手を引き込むビルドアップに挑戦していました。ついぞ完成することはありませんでしたがね。
そもそもそのビルドアップにマスカット監督が挑戦しようと思ったのには、身体的に無理の効く岩田智輝選手が海外に移籍してしまったことや、オープン受容展開だけでは勝ち切れずに悔しい思いをした試合が何試合もあったからです。*1
リーグで優勝しながらも、キーマンを失い、なおかつ課題も見えた中での優勝だったことを踏まえると、その判断自体は至極妥当だったといえます。
ただ、大きな問題が開幕前から発生しました。
それは正GK期待の高丘選手が開幕直前に急遽MLSのクラブへ移籍することになったことです。
このため、チームとしては当初はクラシカル寄りのGKだったオビ選手を起用し、実際公式戦では3連勝しましたが、その後期限付きで加入した一森選手がオビ選手からポジションを奪う形になりました。
一森選手はシーズンが進むにつれてどんどんチームに馴染んでいき、素晴らしい働きをすることになりましたが当初はそもそものトップリーグ経験の浅さなどもあり、不安定なパフォーマンスも少なくはありませんでした。
また、ビルドアップの要だった小池龍太選手がひざの負傷で開幕絶望、更に復帰してすぐまた負傷してしまい丸1シーズンもの間、前年ベストイレブンの代表級RSBを欠いて戦うことになってしまいました。
もっと言うと急成長を遂げていた角田選手も負傷がちで1年間フルで戦っていたわけではありませんでしたし、DFラインは常に脆弱かつ組み立ても怪しいものになっていました。
そんな中でビルドアップを改善しようとしていましたが、マスカット自身がどのようなアプローチをかけて選手を成長させるのか、またチームに浸透させていくのかというところであまりうまく機能できなかったのも事実としてあると思います。
結果として、開幕当初に掲げていた課題を棚上げし、個の力に長けたエウベル選手、ヤン・マテウス選手の突破とキープ、ロペス選手の推進力と得点力にどっぷり依拠する妥協したサッカーを1年間続けることになってしまいました。
実際昨年もあまり見ていて成長を感じない厳しいサッカーだったとは思います。
そんなシーズンを過ごし、スカッドもやり方もそろそろ一新しないとリーグのTopTierから置いていかれかねない、という空気感が漂うシーズン終盤だったように記憶しています。
2:2024年シーズンにハリー・キューウェル前監督がやろうとしたこと
当初キューウェル氏が就任するという報道を聞いて私は愕然としました。
「また」ポステコグルーつながりの人材を安易に連れてきたのか、と。
まあ恐らく強化部としてはそういう意図だったのでしょうけど、幸か不幸か(不幸でしたけど)キューウェル前監督はこれまでよりも「動きに制限を加えた」サッカーを志向するらしいということが分かりました。
参考になるのは2015年から2017年までマリノスを指揮していたモンバエルツ氏の記事です。
ポステコグルーのサッカーを否定するわけではありませんし、マスカットのサッカーを否定するわけでもありませんが、ちょっと選手一人一人の動きが多すぎたというのも事実としてありました。
一人一人が適切なポジションを取り、無駄に動き過ぎないことで変にスペースをあけたりしないこと。というのは当たり前のようにも見えますが、アタッキングフットボールを突き詰めようとした結果、そのあたりの考えと乖離した「動き過ぎるサッカー」になっていたことは事実でしょう。
このような「動き過ぎるサッカー」で結果も出ていたのは事実ですが、そもそもマスカットが2022年を踏まえてそこに問題点を見出した、というところを忘れてはいけません。
「動き過ぎるサッカー」の問題点として
・消耗が激しい(サッカーの質を維持するためには選手層が抜群に厚くないといけない)
・動くことがありきのため、相手にブロックを作られた時の引き出しがない
・少しの技術的なミス、認知のミスで一気にカウンターを食らってしまう
というものです。
もちろんそのようなリスクは欧州のトップチームを見てもあるのですが、欧州のトップクラスだと「圧倒的な質」で解決してしまえます。
それが出来なかったがゆえに、2022年はACLで当時下位に低迷していたヴィッセル神戸に敗れ、天皇杯では栃木に敗れ、ルヴァン杯では広島に敗れ、シーズン終盤のリーグ戦ではガンバ、磐田とどちらも残留争いの渦中にいた2クラブに連敗してしまいました。
実際リーグ自体は取れましたが、この辺りはチームにとって課題であったはずです。
プロセスはともかく、キューウェルはこの課題に対して取り組む姿勢を見せていました。
3:キューウェル前監督が出来なかった理由とキューウェル前監督の評価
ですが、キューウェル前監督がやろうとしていたサッカーはついぞ完成することなく解任の憂き目にあってしまいました。
ではなぜできなかったのか、これは複数の理由が絡み合っていると思います。
・あまりに過密な日程
言うまでもなく2024シーズン前半戦はACLを決勝まで戦ったこと、更にJ1が20クラブに増えたことでまともにやり方を落とし込む時間はシーズン中はほとんどなかったでしょう。
後述の理由とも関係しますが、大きく選手を入れ替えたわけでもないことを踏まえるとちょっと厳しい条件すぎたことは間違いないです。
・選手編成
ビルドアップについてこれるタイプだった角田選手が海外に移籍することになり、完全移籍想定だったであろう一森選手を買い取ることもできなかったことは痛手だったと思います。
また獲得のほうも馴染むのに時間がかかるCBに実質レギュラー1年目だった渡邊泰基選手、バックアップ期待の加藤蓮選手、山村選手と大きくチームを変革させることを考えればあまりに物足りない陣容ではありました。
2023年段階で足りていなかった質が更に落ちてしまった、そんな状態で過密日程の中で想定しているサッカーを推し進めると考えるとどれだけ無茶か、ということですね。
・キューウェル監督の力量
とはいえ、それでも選手個々にあまり成長の兆しが見れなかった*2のはキューウェル氏自身の監督の力量にも問題はあったと思います。
まずはJの選手の質を見誤っていたこと。
憶測ですが彼はもっと選手たちはやれるものだと思っていたのだと思います。
ですが蓋を開けると全くそんなことがなかったというのは起用などを見ても察しました。
また、そのような選手に対するアプローチ、底上げであったり、出来ることと出来ないことを切り分けながら少しずつ浸透させていくといったアプローチは多分うまくなかったんだろうと思います。
だとすると過去の監督キャリアにおいて下部リーグを短期間で解任されていることとも納得がいきます。
また、そのような点とは別で試合中のセルフコントロールも非常につたなかったように思います。
審判に対して執拗なまでの抗議や文句は見ていて気持ちの良いものではありませんでした。
キューウェル前監督自体の評価としては
・リーグはともかくACLは決勝という見たことのなかった舞台に連れてきてくれたことは紛れもない事実であり、功績。
・脳内にあるサッカーの理想像自体は否定されるものではないが、それを選手のレベルに合わせて少しずつ具現化させることは現状だとできない。
・過密日程や編成の悪さ、といったエクスキューズがあるので「キューウェル氏は監督として無能である」というつもりはないが、特段有能とも言い難く、もっともっと指導の研鑽は必要なこれからの人。
といったところでしょうか。
4:現状のチーム
ではそんな合わないサッカーから解放された2024年マリノスはどうか、といわれると誇張抜きに2023年マリノスの劣化版です。
2023年マリノスの劣化版ということは、ざっくりいえば2019年や2021年、2022年のマリノスの劣化版でもあります。*3
ただ勝ち点を取り、降格という最悪の事態を避けるためだけの人事によって、実際よほどのことがない限り残留自体は堅くなっているわけですが、キューウェル監督解任後に得たものは勝ち点だけでしょう。
もちろん現状勝ち残っているカップ戦に関して言うと、運さえ回ればワンチャン優勝できる可能性も0ではありませんし、国内カップ戦はそもそもが運ゲーです。
ただ、積み上げという観点から見ると拙い初心者ながら新たな積み上げをしようとした青二才の改革者から、目先の勝ち点を拾うだけの修理屋になってしまったことで皆無といっても過言ではないでしょう。
2025シーズン以降という観点から見ると、チームに必要なのは手堅い積み上げであり、その為に何をすべきかということを考えて行ってほしいと切に願います。
5:今後の提言
まず言いたいのは「ポステコグルー時代にやっていたサッカーを理想と思うな」です。
はっきり言うとポステコグルーのサッカーは神格化され過ぎで、あんなに燃費が悪くてリスクとリターンが釣り合ってない(のを質で解決する)サッカーが理想形なわけないんですよ。
ポステコグルー期のサッカーの問題は
・選手に質を求める
・選手層も求める
・消耗が激しい
・でも堅いブロックは崩せない
・選手の個人戦術を成長させられない
という人を入れ替える以外解決できないもので、セルティックであれば馬脚を露さなかったけどマリノスではずっとあんなに金を使い続けるのも現実的でなかったでしょう。
そもそもあのサッカーはポステコグルーという稀代のモチベーターが居て出来ることで、あのサッカーのバッタモンなんて碌なもんじゃないっていうのはFC東京でもポステコグルーの一番弟子のクラモフスキーが証明しているのではないでしょうか。
じゃあどうしろ、って話になってきますよね。
実際町田や神戸みたいに今をときめく強度全振りスタイルで、主要な日本人選手は海外帰りを大金で連れてくる、という動きが果たして現実的にマリノスでできるのか、ということで。
もしやるとしたら日産から新しいIT系の会社にでも買ってもらうしかないんでしょうけど、それは現実的ではないでしょう。
そこを考えるのが強化部の仕事の一つでもあるだろう、とは思いますが現実問題としてちょっと日本人選手の海外流出が相次ぎすぎててクラブ単位で頑張ったとて…になりつつはあります。
キューウェル氏がやろうとしていたことより1つ、2つ前の段階であるモンバエルツ氏のようなアプローチを再度かけていくしかないんじゃないかな、っていうのが個人的な意見です。
そもそも守勢に回った時のバラバラな立ち位置、緩いトランジションはこの数年間「アタッキングフットボール」という言葉で覆い隠してきたチームの負の遺産です。
そもそも今のサッカー、いうほどアタッキングじゃないですし、一旦4-4-2のブロックをしっかり組ませられる指導者を連れてきてチームのベースを再構築することからじゃないですかね。
とはいえあのころと違ってちゃんとした練習場はありますし、クラブのブランドとしても「うだつの上がらない古豪」から「まあまあ悪くない環境」くらいにはなってますしね。
今は良くも悪くもポステコグルーのアタッキングフットボールが極度に先鋭化して袋小路に入り込んでしまっているので、そもそもの基本に立ち返ってもいい頃合いなんじゃないかな、とは思います。
あとがき
今のJ1はガチでレベル落ちてるので2年くらいモンバエルツ的なアプローチで再建すればすぐ覇権取り返せると思ってますけどね。
まあ日本人みんな出てっちゃう問題とどう向き合うかってのもありますけど。