こんにちは
つい先ほどACL決勝2ndレグが終わりましてマリノスが完敗を喫し、悲願のACL制覇は成し遂げられませんでした。
まずは遠い異国の地で戦ったチームおよびサポーターへ労りの言葉と、そして優勝したアル・アインに祝福の言葉をささげたいと思います。
試合を見た直後はいろいろなことが頭の中でぐるぐるして、まともに寝付けませんでした。
偉そうに「ああでもないこうでもない」と語ってはいましたがやはり一人のファン目線としてはすぐに飲み込めるものではなかったです。
とはいえ、そんなビッグタイトルを逃した後だからこそ、なぜそうなったのか、そして今後どうすべきなのかというのはやっぱり真剣に考えたいと思い、思考のたたき台としてつらつらと文章を書かせていただきます。
お付き合いいただけると幸いです。
■チーム全体のサッカーIQの差
まず感じたのはチーム一人ひとりのサッカーIQの差です。
10人になってからはより顕著でしたが、アル・アインは無茶攻めをすることなく、じっくりじっくり嬲るように追い詰めてきました。
ここで調子に乗って無駄にオープンにしないところ、相手を刺すべきタイミングといったん落ち着けるタイミングの緩急が「わかってる」チームのそれでした。
サウジアラビアのアル・ヒラルのほうが強いんじゃないか、と言われてもいましたが改めて「このチームならアル・ヒラルを下すのも分かるな」と思います。
もちろんアル・ヒラルと対戦したことはないので実際戦ってみて肌感覚としてどう感じるかはわかりませんがね。
本来であればこういったゲームコントロールを目指していきたいのですが、じゃあマリノスはというとリーグ戦でも無茶攻めで失ってからの失点が目立ち、頭の中身からして違うんだなというのを思い知らされました。
前々任のポステコグルーは良くも悪くも「ゲームコントロールなんかするな、殴り続けていればそれがコントロールだ」とまるで数年後にDVで離婚されちゃう人みたいな思想ですが、前任のマスカット、そして現任のキューウェルは本来もっと現実的な思考のはずでそういった思想の一端が垣間見えたりして好意的に思える時もありましたが、とはいえサッカーは選手がやるもので、選手一人ひとりの違いが露骨に出てしまう、そういうことを感じます。
育ってきた環境やそもそものやり方など、一言で言っても簡単ではありませんが「もし本気でこれからも上を目指したいのであれば」避けては通れぬ道でしょう。
ゲームをコントロールすること、必要なタイミングで必要な判断を下すこと、その為に重要な個人戦術を身に着けること。
少なくともそこを妥協するようなやわなチームじゃないと思わせてほしいものです。
■新米監督に荷が重すぎる現状
監督力という観点で見ると、1stレグからの動きでシメオネ監督の運用や用兵が上回っていたと感じます。
とはいえそこでキューウェル監督を責める気にはどうしてもなりません。
彼を責めるなら、そもそも監督経験が極めて浅い彼を監督にする意思決定をした人たちのほうが遥かに問題です。
キューウェル監督が経験の浅い人物であることなどハナから分かっていたのです。
昨年アジアを制した浦和の元監督、スコルジャ氏のような百戦錬磨の監督とはわけが違う。
次で詳しく書きますが、2023年よりもさらに薄いスカッドに大量の怪我人を抱えつつ、過密のリーグをこなしながACLをラウンド16、準々決勝、準決勝、決勝とそれぞれH&Aで8試合戦う時点でかなりきついといえます。
もっと割り切って主力のコンディション調整が出来たら、とは思いますがそんな決断を下すにはやっぱり経験が足りなすぎます。
言っちゃなんですが、むしろ決勝までこれたのが僥倖といっていいチームです。
準決勝のH蔚山戦なんかあれ100回やったら95回はPK戦までいくこともなく負けてたであろう展開を火事場のクソ力とポープ選手の鬼神のごとき働きで耐えきっただけですからね。
まああれは凄まじかったですけど。
そんな現状でキューウェル監督に求められた仕事が彼のこれまでの経歴を考慮するとあまりにハードすぎたと思いますし、そりゃ厳しいと言わざるを得ません。
少なくとも私は今の段階でキューウェル監督について支持する姿勢は変わりません。
■運をつかむまでに至らなかったスカッドの差
残酷なまでに選手質、選手層の違いが出てしまいました。
こちらのエクスキューズとしては
・1stレグで最もアル・アインのFWに対応できていた渡邊泰基選手がリーグ戦の試合中にアクシデントで脳震盪を起こしてしまい試合に出れなかったこと
・中東経験の豊富なナム・テヒ選手がこちらもまたリーグ戦の負傷で試合に出れなかったこと
・ゲームチェンジャーとしての仕事が期待された天野選手も同じくリーグ戦の負傷で試合に出れなかったこと
・攻撃の要だったエウベル選手がリーグ戦の負傷を押して出場したけどパフォーマンスが悪かったこと
が挙げられますが、とはいえこれらのアクシデントを跳ね返せないのはチームとしての弱さといっていいんじゃないかと思います。
特に試合途中から交代で出てきた選手たちを見ても、いつの間にこんな選手層が薄くなってしまったのだろうか、と愕然としました。
アジアのタイトルであったり、もはやリーグタイトルもそうですが、そういったタイトルを取るコンペティションにおいて要求されている水準を満たせている選手がどれだけいるでしょうか。
チームというのはどうしても全員が全員優秀な選手であることは難しく、時にはリーグ戦や国内カップ戦でプレータイムを調整するためのイニングイーター的な役割の選手も必要です。
ですが、今のマリノスはそもそもそのレベルにすら到達していない選手、他チームであれば「契約満了を待ってオフに移籍先を探すか、夏にレンタルで出るかの2択」であるはずの選手が当たり前のようにこの大舞台にも出てきます。*1
もちろん使っている監督が悪いと言われたらそうかもしれませんが、使わざるを得ない編成なのも事実でしょう。
本気でこれからも上を目指すのであれば、今の惨憺たるスカッドを大きくテコ入れしないと厳しいと感じます。
正直、選手一人ひとりでみると限界まで頑張っていたと思います。
残酷なまでに「力の差」を見せつけられていましたし、戦えていないように見えた選手は疲弊していたか実力が著しく欠けているかのどちらかです。
ファミリーとして、チームのために戦う選手たちに必要なのは彼らの力になってくれる新しい仲間です。
チームのために死力を尽くし、強力な相手とも互角にやりあいながら120パーセントを出し切って疲弊している選手たちこそ私たちが守らないといけない存在で、彼ら「ファミリー」のために新しい仲間が必要なのです。
■アタッキングフットボールという言葉
ここに関しては、「相手を見る」ということもそうですし、まずそもそも前線からの守備を整備するということが必要なのに出来ていないまま形だけ高いラインをとることによるチームの穴が見えました。
ポステコグルーの残した「アタッキングフットボール」というのはあくまで彼の思想です。
もっとチームとしてそこの解釈に深みを持たせないといけません。
マスカットはやろうとして、結局諸事情や本人の能力的な限界もあり、出来ずに終わりました。
キューウェル監督も今は薄いスカッドに過密日程の二重苦でなかなか難しいところはありますが、「キューウェル流のアタッキングフットボール」を出してほしいですし、その為にスカッドの強化は必須です。
私たちファン・サポーターが見たいのはきっと勝利だけじゃなくて、チームの成長です。
チームが今までやれてなかったことをどうやって克服し、やろうとするか、そこが見たいはずです。
今いる選手たちで限界があるのなら入れ替えるというのは本来私たちマリノスサポーターは特に慣れているはずです。
キューウェル監督はフロントに要望を出してほしいですし、フロントもその言葉に対して最大限耳を傾けてあげてほしいです。
■夢、破れし後
そんなこんなでビッグタイトルを逃してしまったわけですが、とはいえ幸か不幸か、マリノスは今期まだ4つのコンペティションが残されています。
リーグはかなり勝ち点が離されて厳しい状況ではありますし、何より移籍市場が開くまではほぼ今の厳しいスカッドで戦わなくてはいけないことが確定しているため、多大な期待はできませんが…*2
負けは意味がないといいますが、少なくとも200万ドルという少なくない賞金に加え、ACLで決勝まで進めたというのはそこは一つ自信にしていいでしょう。
これまでの大会のようにラウンド16敗退やGL敗退で終わった場合、今後またACLに参加する際も必要以上に構えすぎてチームとしてイップスになりかねないと懸念していましたので。
月並みですが大事なのはこの負けをどれだけ意義のあるものにするかです。
少なくともアル・アインはマリノスが今まで誤魔化してきた箇所に対して赤入れをしてくれたのです。
それはもう学びとし、活かすしかないと思います。
活かしてほしいと願うばかりです。