こんにちは
今の野球界において、リリーフの重要性が叫ばれることは多いです。
昨年の巨人がリリーフの崩壊によってBクラスに落ちてしまったことは記憶に新しいでしょう。
ですが、そんな意見とは裏腹に「セイバーメトリクスの観点から見ると優秀な投手は可能な限り先発に回すべき、リリーフの貢献度は限定的」という意見もあります。
先に言いますと私は後者の考えです。
もちろん最後は好き嫌いですので、この考えが正しい絶対正義のものだ、という気はありません。
ですが、あくまでセオリーとしてはという話になります。
■先発が投げるイニングとリリーフが投げるイニング
確かに試合を見ていて優秀なリリーフ投手が危なげなく僅差のリードを守り抜くリレーを見ていると「助かるな」とは思います。
不安定なリリーフ投手だと、そこそこの確率でリードを失ってしまうわけで、「勝ち試合」だと思っていたものがこぼれてしまうことによるストレスは間違いなくあります。
ただ、ここに関して言いたいのは野球は「9回」での得点の競い合いです。
どういうことかというと、先発が崩壊してもう3回4回で大差がついてしまった場合、勝ちパターンのリリーフ投手が登板することすらなく負けることが大半です。*1
先発もリリーフもできる投手AとBがいて、Aが優秀な投手でBが微妙な投手としましょう。
先発のAが作った試合をリリーフBが守り切れずに負ける確率と、Bが炎上してAが登板するまでもなく暇をしてそのまま負ける確率とどっちが高いかと考えたほうがいいです。
多分見ている側のストレスは前者の試合のほうが高いですが、チーム全体の勝ち星が減るのは後者だと思います。
なぜなら、力がそこまで卓越しているわけではない投手でも、目が慣れられる事もなく、1イニングを全力で投げるとなるとある程度の確率で抑えられるからです。
ここで大変申し訳ありませんがひとつ事例を出させていただきます。
・吉田輝星投手(オリックス)
22試合登板 0勝0敗 防御率4.96 奪三振率4.96 WAR0.0
今の打低環境もかんがみると、お世辞にも「優秀な投手」とは言えません。
一軍レベルで見ても「いい投手」とは言えないでしょう。
ですが吉田投手は22試合登板のうち、失点を喫したのが6試合しかありません。
しかも6試合のうち5試合は1失点、残り1試合で4失点です。
もちろんシチュエーションが違うので簡単なことは言えませんが、7割以上の確率で無失点で切り抜けているわけです。
もしこの吉田投手が開幕からローテに入って、11試合ほど投げていたらどうなっていたか、と考えると先発とリリーフ、どちらが勝敗に与える影響が大きいかは見えてくるのではないでしょうか。
また、野球において先発とリリーフ、どっちがイニングを投げる割合が多いかと考えると間違いなく先発です。
平均の先発投球回とリリーフの投球回を比較すると、ざっくり6イニング弱:3イニング強ほどになります。*2
年間の投球回がざっくり1300回くらいで、先発が850回でリリーフが450回です。
先発だとざっくり150回前後、リリーフだと50~60回くらいの貢献になります。
より優秀な投手により多くイニングを消費してもらうことが勝ちにつながることになるのです。
■優秀なリリーフを先発に転向させるべきか
結論から言うと転向させるべきです。
理由は先述のようにチームの勝利を最大化させるには優秀な投手に多くイニング消費をしてもらう必要があるからです。
また、理由はもう1点あります。
それは、優秀な投手をいたずらに消耗させないためです。
もうある程度認知は広まっていると思いますが、リリーフが消耗の激しいポジションです。
消化イニングは先発より少ないですが、年間50~60、時には70試合近く投げることもある負担は先発とは全く異なります。
また、登板する試合以外にもブルペンで準備をしていることを考えると相当数投げていることは想像に難くないでしょう。
実際、リリーフ投手が複数年続けて活躍する事例は意外と少なく、5年もてば超一流といえます。*3
投げるイニングは長いですが、中6日*4で準備が決まっている分先発のほうがやりやすい面はあると私は思います。
■若くて優秀な投手をリリーフにすることのリスク
20代前半の若い投手をリリーフにすることのリスクは上記の消耗以外にもう1つあります。
それは「不動のセットアッパー」「不動のクローザー」として固定されてしまうことです。
勝ち試合を確定的なものにしてくれる勝ちパターンのリリーフの活躍は目に見えやすく、1年間リリーフとして走り切るとファンも首脳陣もフロントも「来年以降もこのリリーフの柱として頑張ってほしい」と思いがちです。
本人が何も言わなければ、「来年もリリーフでよろしく」となりがちです。
首脳陣からしたら新しくリリーフを組みなおす作業は楽なものではありませんし、前年上手くいった流れを継続したいと思うのは不自然ではないでしょう。
こうするとよく「過去に先発転向した事例もあるじゃないか」といいますが、驚くくらい例外なくみんな「先発転向を直訴」しています。
選手が声を上げて「先発をやりたい」と言わなければなし崩し的にリリーフで流されていく可能性が高そうに見えます。
もちろん選手も自分のキャリアを考えたときに自分で声を上げるのは大事ですが、1年間なんとか走り切った選手の心境を考えるとそこまで自我を出せる選手はごく僅かでしょう。*5
■逆に先発転向しなくていいリリーバー
ここまでリリーフ投手の先発転向を推奨してきましたが、逆に「先発転向をしないほうがいい」タイプの投手を挙げていきます。
・見栄えの数字は良くても三振が少ない投手
例えば防御率がよかったり、ホールド数、セーブ数が多くても三振が取れない投手
具体的には投球回を超える三振数をとれない投手はリリーフのままのほうがよいでしょう。
1イニングを全力で投げても三振数がイニングを超えない投手であれば、先発をするともっと三振が取れなくなってうまくいかない可能性が高いと私は思っています。
・球種が極めて少ない投手
例えば投球の8割9割がストレート、あとはもう1球種といった投球スタイルの投手。
またストレートともう1球種を五分五分くらいで投げ分けるといったタイプの投手は生粋のリリーフ投手といえるかなと思います。
流石にストレートともう1球種だけで先発として5回も6回も投げるのは難しいでしょう。
1回り目は通用しても2回り目はどうしても目が慣れますし、パターンも少ないので打ちやすくはなるでしょう。
全盛期の藤川球児投手は基本的にストレートごり押しだけで三振を取りまくってきた稀代の名投手でしたが、じゃあ同じピッチングを先発でできるかといわれるとそれは無理な話ですよね。
・ベテラン投手
30歳を過ぎたベテラン投手がスタミナをつけて先発をやるというのは、いくら優秀なリリーフであっても現実的ではないでしょう。
そこまでいくとリリーフで行くところまで行ってキャリアを締めくくるのが現実的でしょう。
余談ですが、2016年に日本ハムが優勝した時に、30歳を過ぎたベテランクローザーだった増井投手を2軍調整させながら先発転向して2桁勝たせた栗山監督の判断、今考えても意味がわからなさ過ぎて震えます。
それでは本日もお付き合いいただきありがとうございました。