今育成ええ感じやねん

どこがやねん

 

 

 

 


こんにちは。

 

先日、「若手とは」「育成とは」ということを考えるに至ったきっかけになったニュースがありました

www.f-marinos.com

現大学一年生の塩貝選手(慶応大)を早くも内定との運びになりました。
同年代にはユース卒で、世代別代表でも活躍した内野選手(筑波大)や松村選手(法政大)がいますが、流石にまだだろうと思っていたので、同年代の塩貝選手の内定にはびっくりさせられました。

 

hochi.news

また、その後には現高校2年生の名和田選手(神村学園高校)もキャンプで練習参加しており、更に言うと欧州や国内各クラブとの争奪戦にマリノスも参戦しているとのことでした。

こちらに関しては有力な高校生の内定時期は大体今の時期くらいになりがちな印象はあるので、「まあそんなもんか」くらいに思っています。

 

まず簡単に私自身がこの2件についてどう感じているか、そして更に若手育成についても書いていきたいと思います。

 

■塩貝選手について

こちら、塩貝選手ですがまず結論から言うと

「全く問題ない。むしろいいことではないか。」と考えています。

 

今回の内定によって出てきそうな懸念点および問題点として

・早期内定による安心感からくるパフォーマンスの下落

・本来教育機関である大学をレンタル先扱いしていること

くらいかなと思っていますが、まず1つ目に関しては、塩貝選手をどう捉えているかにもよると思います。

彼自身の目標、ゴールがJに入団することならもしかしたらそうなるかもしれませんが、今の若くて有力な選手の大半にとって、Jクラブ入団はスタート地点に立つくらいの感覚でしょう。善し悪しは別として。

ちょっと話はそれますが、塩貝選手が字面通り卒業を待ってきっちり2027年から入団するとも限りません。

むしろその可能性は低いでしょう。

マリノス側の事情、本人の仕上がり具合次第で早期のプロ契約は十分考えられるでしょう。

塩貝選手としてはマリノスはあくまで”踏み台”、見据える先は欧州でしょうし、そのモチベーションであればマリノスの内定ごときで安心してパフォーマンスを落としてしまう可能性は低いと思います。*1

 

2つ目については、そこはもう「慶應マリノスの間で決まったことだから」としか言いようはないですし掘り下げようにも、掘り下げきれないと思います。

例えば各クラブで有力なユース卒のHG選手たちは基本的に育ったクラブに帰りがちです。*2

明確に内定を出していないだけで、ほぼ帰巣が既定路線みたいな大学進学ケースはいくつもあるわけですし、それはじゃあ大学をレンタル先扱いしてないと言えるの?というと微妙なケースだと感じます。

が、そもそも大学をレンタル先扱いして悪いのかというと、大学側からしたら実績作りにもなるし、そこまで悪いことでもないのかなと思ったりします。

とはいえ若手育成という観点から見てみると、今の日本サッカー界は大学に育成を外注しているような側面はあるな、と思うのです。

大学側からするとその見返りは卒業生の飛躍により人気を向上させること、またプロクラブの優秀なユース選手を優先的にあてがってもらうことなどでしょうか。

後で詳しく語りますが、今のJリーグ、特にJ1は10代から20歳そこそこの選手にとっては厳しすぎるリーグなんですよね。

それだったら出番がある大学、J2以下のカテゴリ、ユースリーグのある欧州クラブに行った方が成長が見込めると考えるのはまあ何もおかしなことではありません。

 

■名和田選手について

練習参加は自由ですし、取る気の有無にかかわらず練習参加くらいは別にあっていいと思います。

ただ、実際に狙っているということで少し思うことを書きます。

タイプ、キャラクターは違えど直近で言えば高卒で世代屈指のアタッカーであった樺山選手を前々任監督と前任編成担当者の肝煎りで獲得しましたが、結局樺山選手の強度の無さ、継続できなさを改善することができないまま2年で手放すことになりました。

その前だと後に代表にもなった町野選手を使うことなくレンタルし、戻すことなく手放した例もありました。

この2選手*3に共通して言えるのは、「チーム内のライバルたちの圧倒的な質と層が分厚すぎた。」ということです。

町野選手だと当時はエジガル選手、エリキ選手、オナイウ選手がライバル

樺山選手だと当時はエウベル選手、仲川選手(マルコス選手、西村選手、水沼選手)がライバル

まあきついなんてもんじゃないですよね。

私は率直に言うと名和田選手がマリノスに加入した場合、町野選手や樺山選手と同じことが名和田選手にも起きるのではないか、と危惧しています。

というか無理なんですよ普通に。

マリノスに限らずですが、J1の中位以上のクラブで安定して試合に出るレベルの10代の選手なんて滅多にいるもんじゃないです。

よほど編成でボロッカスになったところを穴埋めするかのように出るとか、それくらいじゃないとまともに試合に出られる環境じゃありません。

とはいえ他のJクラブにいって敵になるのも怖いので、直で欧州に行ってほしいところですね。

 

■岐路に立たされるJ1の若手育成

J1クラブ、特に上位争いをするようなチームの若手育成、シンプルに無茶苦茶きついと思います。

まず今の高校生からすると進路の選択は大きく4つあります。

●J1クラブに入団する

●J2/J3クラブに入団する

●大学に進学する

●欧州クラブと契約する

 

まずもって上記の選択肢のうち、出場機会が一番厳しいのは欧州クラブではなくJ1クラブです。

欧州クラブには基本的にセカンドチームがあり、若手主体のリーグを戦っています。

まるっと大学年代の分だけもう1つユースに近い組織を持っているような感覚です。

J1はそれがないので、トップチームにぶち込まれて強力すぎるライバル相手にほぼ無理ゲーに近いポジション争いを強いられてしまいます。

また、世代別代表ならJ2やJ3からでも呼ばれます。

J2やJ3で出場機会を得て結果を出すと、主力待遇に近い形でJ1に移籍することもできますし、なんならJ1をすっ飛ばして欧州すら狙えます。

大学は将来のキャリア形成に強みがあります。また、同年代の選手たちとしのぎを削る分だけやはり出場機会はJ1より遥かに確保しやすいのは事実でしょう。

18歳の新卒からすると、J1クラブへの入団という一番魅力的というわけでもない道が圧倒的に一番険しいわけです。

よほどそのクラブへの関心がないと、よほど好待遇じゃないと選べないんじゃないかなとそう感じます。

 

もちろんJ1クラブはJ1クラブで有望な若手をレンタル移籍しますが、レンタル移籍は万能じゃありません。

まずもってレンタル移籍できている若手の立場は弱いです。

プロキャリアの浅い、もしくは無い選手のレンタルですから、ある程度レンタル先はちゃんと考えてあげないと「合わないサッカーで苦しみながら試合に出られないだけで1年過ごす」ことも大いにあります。

活躍次第ですが1年で帰ってしまうような選手を軸に据えるなら、レギュラー取れるか取れないか程度の実力じゃ難しく、ある程度抜けた実力じゃないと難しくなります。

また、それ以外にも借りているクラブが買い取りにかかる可能性もあります。

かといって手元においても出場機会が与えられるとは限りません。

 

結局大学に育成を外注する選択が一番丸い、と思えるくらいにはJ1の育成は障壁だらけです。

ただ、これを「無理してでも育てようとしないJ1クラブの怠慢だ」というのならそれは個人的にはちょっと厳しすぎる意見に思えます。

プロである以上勝ちを求めるのは当然です。目先の勝ち点を捨ててでも若手を使うというのはやるもやらないも自由ですが、やらなくても普通のことです。*4

育成はトップチームのリソースにフリーライドするものじゃありません。

 

とはいえ高卒選手を迎え入れるなら最低限のキャリアプランは持っておくべきですけどね。

何もなしにとりあえずセール感覚で高卒選手を獲得して、特段キャリアプランを用意するでもなく、とりあえずでレンタル放流を繰り返し、期間が来たら契約満了で切り捨てるようなやり方は流石にクソですし、それを「プロの世界は厳しい」や「クラブ側の親心」とか言い出すサポーターもクソですけどね。

厳しい世界だったら尚更獲得には、そしてトップ昇格には慎重になるべきなんじゃないのかと。

それが出来ずに面倒も見切れずに切り捨てることが「親心」はいくら何でもクラブに都合よく解釈しすぎです。

 

話は逸れましたが、大事なのは「18歳~21歳ごろまでの若手選手」の「安定的な出場機会」をクラブ単位じゃなく、リーグ単位で担保することじゃないでしょうか。

2021年に発足したはいいが、すぐに頓挫したエリートリーグのようなユースリーグがない限り、育成は今のままずっとこうなります。

「別に育成環境は今のままでいいし、基本大卒を中心にして高卒は無理に育てなくても出られる場所で出ればいい。」と思うならそれでいいです。

私自身それに近しい思想です。

ただ、「高卒選手の育成をどうにかしないといけない」と強弁するのならまずは上記のようなリーグとしての仕組みから議論すべきかなと思います。

「育てないクラブが悪い」とクラブのせいにするような問題ではないと思います。

 

*1:言ってて悲しくもなりますが、そういうもんだと飲み込むしかないでしょう。

*2:編成面や負傷などで絶対ではありませんが

*3:アタッカー以外のポジションも含めると更に居ますけどね。

*4:かといって高卒選手を近々で使う気もないのに大量獲得して大量レンタルするのが正しいかと言われると個人的には「NO」ですが。