こんにちは
12/24に行われたM-1グランプリの決勝の感想を書きたいと思います。
大前提として「8000組以上の中から選ばれし10組」であることは忘れちゃいけないと思っています。
1組目:令和ロマン【648点 / 3位通過】
期待の若手でしたが、トップバッターを引いてしまい流石に「これは厳しいか」と思われましたが予想を裏切って勝ち上がりました。
ちょっと衝撃的なトップでしたが、後から聞いた話では戦略的にネタを選び、審査の基準を狂わせる策がはまったということで二度驚きました。
昨年の敗者復活の時点で「これは来るな」と感じさせるものはありましたが、さらに上回ってくる圧倒的な仕上がりと場慣れした雰囲気は結成5年目の出せる物じゃありませんでした。
昨年のファイナリストであるヨネダ2000に、今回の令和ロマンが同期ということで他の同期芸人たちはどれほど心を折られたんだろうなんてことを思ってしまいます。
ド王道のエリート街道を驀進しつつも、親しみやすさのある令和ロマンが作り出すお笑い界が私は楽しみでなりませんでした。
2組目:シシガシラ【627点 / 9位】
敗者復活で、個人的には歌ネタの最高峰というか最高到達点に近いものを見せられて文句なしの勝ち上がりでしたが、敗者復活のネタは封印して異なるネタで挑みました。
所謂面白おかしく楽しい感じのハゲネタで、脇田さんの可愛さと哀愁を両立したフォルムはテレビ受けしまくるだろうなと感じましたがインパクトはやや足りなかったように思います。
ハゲネタがベタで評価されないというのを敗者復活のネタで覆してきましたが、あのクラスのネタを用意できるか、用意できたとして隠しつつ決勝で持ってこれるか(2本目はとりあえず置いといて)に尽きると思います。
3組目:さや香【659点 / 1位通過】
昨年も1stステージで圧巻のパフォーマンスを見せ、優勝候補として期待を集めていた中でその高すぎるハードルに負けることなく素晴らしいパフォーマンスを見せました。
昨年の「おとん81…?」もそうですが今回も「エンゾ53歳」と終盤で1ギア上げてくる構成はもう名人芸の域でしょう。
テンポ、間、技術に関しては言うことがなく完璧ですが、彼らが心配なのはまた今後も出るとなるとさらに高いハードルを設定されてしまうことで『過去のさや香』と戦わされて勝手に点数を差し引かれてしまう可能性があることです。
オズワルドが苦しんでいますが、過去の素晴らしかったパフォーマンスや多忙なスケジュールの中でもっともっと勝てるネタを仕上げるのは彼らと言えど難しいミッションだと思います。
4組目:カベポスター【635点 / 6位】
ネタは面白かったです。ただ4分でやるネタなのかと言われたときに「もう1つ2つ山が欲しいな」と思いましたし、多分本人たちもネタから削った箇所はあったんじゃないかなと勝手に推測しています。
声量や勢いで勝負していないだけに、4分の間で観衆の心をつかむのはかなり難しいですが、それでも着実に受けを取っていたのはネタの質の高さによるものだと感じます。
ですが2021年オズワルドのように、しっとりした入りから爆笑をもぎ取った例もありますし、静の漫才師も全く不利というわけではありません。
まだ飽きられた感じもありませんし、来年以降のバウンスバックも期待していますし、十分できると思います。
5組目:マユリカ【645点 / 4位】
キモだちでヨゴレ、この時点でマユリカ中谷が各局のオモチャになったことが確定しました。
所謂コント漫才で、良くも悪くも特筆するようなことは無かったのですが、演技のうまさ、そつのなさで高得点につながったものと思われます。
新しさという観点でいくとそこまでのものはなく、劇場受けという意味では間違いなくするだろうけど、賞レースとして考えるともう1ひねり2ひねり欲しいかなというのは個人的な願望であり意見です。
ただ、そこまでせずともあの強烈キャラがこれからお茶の間を席巻していくのだとしたら無理に賞レースに出ずともバラエティでしこたまいじられながら寄席でしっかり笑いを取るポジションでもいいのかもしれませんね。
正直いかなる舞台でも彼らが「ハズす」イメージは全くないです。
6組目:ヤーレンズ【656点 / 2位通過】
圧倒的なウザキャラの濃さ、テンポ感で笑わせてもらいました。
何となくインディアンスとちょっと似ているなと思いますし、ツッコミの技量の分だけインディアンスより上かなと思っています。
手数が多く、ボケ倒すスタイルでこりゃどこで出ても滑らないだろうなと思いましたが、ここまで受けると新しさや独特な視点といった要素がなくとも高得点になるのは当然だろうなという感じでした。
ネタ番組、寄席で出てきたらめちゃくちゃ輝く、輝ける強さはあると思いますが賞レースとなった時に来年以降どのようになっていくのかちょっと私には予想がつきません。
パターン自体は明確なので、その武器をガッチガチに磨き上げていくのか、新しい手札を増やすのか…
7組目:真空ジェシカ【643点 / 5位】
3年連続の決勝でしたが3年連続審査員にハマり切らず涙を呑むことになりました。
所謂「大喜利漫才」の代表選手で、毎年良くもそんなにアイデアが出るなと感心させられてばかりです。
ボケが伝わらなくてもいい、という気概でネタを作っているフシが見受けられますが、松本人志の「笑いは遠近感」という言葉が良かったです。
近すぎても笑いにくいし、遠すぎても笑えない。
そういう意味だと彼らのネタはどうしてもどの審査員に対しても程よい遠近感とはなりにくいのかなと思います。
見ている側に優しくないというか…
とはいえ今回のネタはいちばん優しかったように思いますし、これでも厳しいなら変に迎合しに行かずに突き抜けてほしいです。(吉住のネタをやってほしい)
8組目:ダンビラムーチョ【631点 / 8位】
個人的に1番「公平な目」で見られなかった組でした。
誇張抜きで5年以上前から彼らのことは認知していましたし応援していました。
ですが、芸人としてではなくYoutuberとしてです。
私にとってはずっと応援していたインディーズYoutuberだった彼らが地上波の大舞台でネタをやる姿を私はどうしても平常心で見ることができなかったです。
ネタの質どうこうより、賞レースとして考えたときに歌ネタの賛否はあると思います。
面白い、面白くないより「歌ってどうなん?」となる層はどうしても一定数居るんだと思います。
天体観測についてもフリとして冗長すぎるという意見は至極真っ当ですが、多分彼らはもっと長くてもいい、むしろもっと長い方が本調子なのだと思います。
彼らの強みは突き抜けた歌ネタなので、変に賞レースに迎合してしまうことが正しいかは分かりません.。
9組目:くらげ【620点 / 10位】
審査員の松本人志から「ミルクボーイを思い出した」と言われていましたが、実際私もそれを感じました。
別に一言一句ミルクボーイというわけじゃなく、1つのお題に対して大喜利的な話題を羅列するフォーマットが明確に見えたためにそう感じました。
いわゆる「システム漫才」と言われるもので、1つのフォーマット、パターンに当てはまる内容を繰り返すことですが、これシステムが見えてしまうと個人的には冷めます。
確かにいかついおっさんが31アイスの可愛いメニューを言いまくったり、ルージュのブランドを羅列しているのは馬鹿馬鹿しくて面白かったのですが、「あーそういうフォーマットか」ってネタバレされちゃったのは痛かったと思います。
基本的にシステム漫才はもうミルクボーイとジャルジャルで掘りつくしたと思っているので、寄席でやるのは大変結構ですが賞レースでやるのは新しさを投げ捨てた感じになっちゃうなあと私は思います。
10組目:モグライダー【632点 / 7位】
前回出場した時と似たようなフォーマットで挑んできました。
「練習すればするだけつまらなくなる」コンビは唯一無二でしょう。
高確率でハプニングを起こすはずのともしげの爆発力が弱かったように感じますし、もっと言うとネタ自体もっとともしげの脳内CPUを苛め抜く内容にしてしまったらもっと楽しめたのかなと思います。
今回のネタは良くも悪くもともしげのCPUで処理できる範囲が大きすぎたのかなと個人的には感じましたし、本人も練習をしてしまったと語っていました。
もっと極限までともしげの脳みそを追い込んで、もっと突き抜けたそんなモグライダーを見たかったと個人的には感じました。
最終決戦
令和ロマン
1本目より強いネタを持ってきたこと、準決勝ネタを使わなかったこと、もっというと決勝に向けて4本ネタを作ってきたこと、全てにおいて異次元過ぎて開いた口が塞がりませんでした。
誰かが言っていましたが、「令和ロマンはただ優勝したんじゃなくてM-1を攻略しに来た」というワードがぴったりでした。
しゃべくり、コント何でもできるオールラウンダーですが、地の力を思う存分見せつけた感じはあります。
霜降り明星以来の平成生まれM-1王者ですが、霜降り明星の時よりも更に「新時代」の幕開けを感じました。*1
昨年の敗者復活の時に披露したネタをかなりブラッシュアップしてきました。
昨年の敗者復活は正直ほぼ印象に残っていなかったのですが、今回は笑いっぱなしでした。
1年でレベルをものすごく上げてきたことですし、実際審査員票を3つ獲得していることからもわかるように紙一重だったと思います。
まさかの新山が独演会をするタイプのネタで、ネタの良しあしより虚を突かれて観衆がネタに入り込むのに1、2テンポ遅れてしまい、そのままズルスルいった感じはあります。
ですが、彼らはそれをわかった上で腹をくくってやりきったように見えます。
傍から見れば「なぜそんな選択をしたのか」となりますが、自分たちが一番納得できる形、納得できるネタで最後を終えたかったのだとしたらそれがまさしく芸人としての矜持なのかもしれません。
自分たちの幻影に悩まされる可能性は十分にあるくらいには実績を積みましたが、それでも私はさや香の来年に期待したい気持ちでいっぱいです。