MLBとNPBの違いをニワカが浅く語ってみた

こんにちは。

WBCなどの影響でMLBに興味を持ち始めました。

まだまだ解像度の浅いところは少なからずありますが、NPBをずっと見てきた人間が、MLBの制度を知ってどう違うのかを嚙み砕いてみたのでよかったら読んでいってください。

 

■2リーグ3地区制

まずはここでしょうか。

NPBはセ・リーグ、パ・リーグがそれぞれ6球団ずつの計12球団。

レギュラーシーズンでは同じリーグのチームと25試合ずつ対戦し、パ・リーグのチームとは5月末から6月下旬の交流戦3試合ずつ対戦。

その合計143試合で順位を決めます。

 

MLBはア・リーグ(アメリカン・リーグ)とナ・リーグ(ナショナル・リーグ)が15チームずつで合計30チーム。

更にアメリカは国土が広大なためこのリーグをさらに東地区・中地区・西地区と3つに割ります。

つまり、

ア・リーグ東地区、ア・リーグ中地区、ア・リーグ西地区

ナ・リーグ東地区、ナ・リーグ中地区、ナ・リーグ西地区

の計6つのカテゴリにそれぞれ5チームずつが割り当てられることになります。

これらの詳しい優勝決定の方法は後述の「ポストシーズン」で語っていきます。

 

そして、MLBにはもう一つ特色があり、それは「交流戦」がないという事です。

といってもレギュラーシーズンでア・リーグとナ・リーグの対戦はザラにあります。

ただ、NPBのように決まった期間で他リーグと対戦するわけではなく、レギュラーシーズンのどこかに当たり前のように日程として入れられます。

 

また、1年でどのチームとどれくらい対戦するのかというのもNPBと大きく違います。

例えばア・リーグ東地区のチームの場合ですと

・ 同リーグ・同地区(ア・リーグ東)
13試合 × 4球団 = 52試合


・ 同リーグ・他地区(中地区+西地区)
6試合 × 6球団 = 36試合
7試合 × 4球団 = 28試合
→ 合計 64試合

(※どの球団と6試合・7試合になるかは年ごとにローテーション)

 

・ 他リーグ(ナ・リーグ)
3試合 × 14球団 = 42試合
4試合 × 1球団(固定の“ライバルカード”)= 4試合
→ 合計 46試合


・ まとめ
同地区:52試合
同リーグ他地区:64試合
他リーグ:46試合

合計:162試合

を戦います。

この固定の”ライバルカード”は例えばロサンゼルス・ドジャースだったらロサンゼルス・エンゼルスといったように近隣のローカルライバルになります。


■ポストシーズン

NPBにもポストシーズンがありますし、日本シリーズには大きな権威があります。

ですがそれ以上にNPBでは長いレギュラーシーズンを制覇した球団を評価する傾向にあります。

ですが、MLBはそもそも3地区制で先述のような内容でそれぞれ試合数を重ねていくことから、レギュラーシーズンのみではリーグの優勝を決めることすら出来ません。

そのため、このポストシーズンが非常に重要なカギを握っています。

 

MLBのポストシーズンは、レギュラーシーズン終了後に行われるトーナメントで、全30球団のうち12球団が出場します。仕組みを順番に整理します。

・出場チーム(12球団)

各リーグ(ア・リーグ/ナ・リーグ)ごとに:

地区優勝:3球団
ワイルドカード:3球団(地区優勝以外で勝率上位)

合計:6球団 × 2リーグ = 12球団

 

・ シード(順位付け)

各リーグ内で勝率順に並べて:

1位:地区優勝の中で最高勝率
2位:地区優勝の中で2番目
3位:残りの地区優勝
4位〜6位:ワイルドカード(勝率順)

 1位・2位は1回戦免除

 

・ トーナメント構造
① ワイルドカードシリーズ(1回戦)
3試合制(2勝先取)
組み合わせ:
3位 vs 6位
4位 vs 5位
上位シードの本拠地で全試合開催
② ディビジョンシリーズ(準々決勝)
5試合制(3勝先取)
組み合わせ:
1位 vs(4位/5位の勝者)
2位 vs(3位/6位の勝者)
③ リーグチャンピオンシップシリーズ(LCS)
7試合制(4勝先取)
各リーグの優勝決定戦

 

図にするとこのような形になります。

 

 

地区優勝はあくまでその地区で勝率が一番高かっただけであり、リーグ優勝はこのトーナメントを勝ち抜いて初めて名乗れる資格となります。

NPBは地区に分かれていないので、レギュラーシーズンの勝率1位チームがそのままリーグ優勝となり、ポストシーズンはあくまで「日本シリーズ」という別大会に出るためのものですので、例えば2024年はセ・リーグ優勝のジャイアンツではなくセ・リーグ3位のベイスターズが日本シリーズに出てそのまま優勝というようなことが起こるわけですね。

ですが、MLBの場合だとそもそもこのトーナメントを勝ち抜いたチームがリーグ王者となり、リーグ王者同士でワールドシリーズを戦うことになります。

 

■編成・ロースター

では次にNPBとMLBの編成についてみていきます。

 

まずはNPBですが、NPBは

・支配下枠:最大70人

・一軍登録枠:最大31人

・ベンチ登録枠:最大26人

・育成枠:制限なし

となります。

一軍登録枠とベンチ登録枠の差は投げる予定のない先発ローテ投手や選手の休養、急遽呼んだけどその試合は使わない二軍上がりの選手などです。

 

MLBは

・40人枠:その名の通り40人の枠で、これは後述のメジャー契約/マイナー契約とも関係しますが、大まかに言うとメジャーでプレーをする、もしくは今はマイナーだけどメジャーでプレーをする資格を持つ選手の枠です。

・アクティブロースター:これは最大26人の枠です。NPBにおけるベンチ登録枠と考えてください。NPBと違うのはベンチ外という概念はないので、前日投げたローテ投手でもベンチ入りします。(とはいえワールドシリーズの最後のほうでもない限り投げることはありませんが。)

 

また、マイナー選手の保有にも人数の枠がありますが、長くなるので以下で別途説明します。

 

マイナーの選手保有数は球団ごとに最大165人まで(※一部例外あり)

内訳イメージ
AAA:約28人
AA:約28人
A+(High-A):約28人
A(Low-A):約28人
ルーキー・複数チーム:約40〜50人

合計:150〜165人前後

 

また、マイナー選手にも2パターンあります。

● A:40人枠に入ってるマイナー選手
メジャー契約
すぐ昇格可能


● B:40人枠に入ってない純マイナー選手
完全に別枠
昇格には枠を空ける必要あり

 

Bのマイナー選手はNPBでいう所の「育成選手」に近く、ノーマークだったマイナー選手が急に成長をしてロースターに入れたい場合、40人枠に入っている選手をマイナーに落とすDFAと呼ばれる動きをする必要があります。

 

私より数段賢いAIにこのあたりのルールをまとめてもらいました。(これがあれば長ったらしい文章は不要な気もしますが…笑)

 

 

とつらつら書いてきたわけですが、NPBのように最大70人の支配下枠でカジュアルに上げ下げして戦力運用する世界ではないため、編成で大きな違いがあります。

 

●中4日ローテ

日本では基本的に6人のローテ投手を中6日で回すローテが主流ですが、MLBの枠では先発で6人も固定する余裕がありません。

そのため基本的に5人の投手でローテを回すことになります。

もちろんフル回転する投手ばかりではないため、40人枠にいる投手でかつマイナーでプレーしている投手にも投球機会は巡ってくるわけですが。

 

●野手登板

日本では極めてレアな野手登板ですが、MLBではさほど珍しくもありません。

大差ビハインドの試合でわざわざ貴重な枠から貴重なリリーバーを投げさせるくらいなら、野手を投げさせるというのは合理的でもあります。

 

●ユーティリティプレイヤー

枠が狭いのはなにも投手だけでなく、野手も同じです。

26人の枠のうち、半分の13人が投手(ローテ投手5人+リリーフ投手8人)で、残り13人が野手です。

その為DH含むレギュラー野手9人に控え4人(更にそのうち専門職で緊急時に居ないと困る捕手が2人)となります。

そうなると有事の際であったり、試合展開を見た野手起用に幅を持たせる上でも複数ポジションをこなせるユーティリティプレイヤーの存在は大きくなります。

例えばドジャースであればトミー・エドマン選手のように内外野ほぼ守れる、と言った選手は運用を助けてくれます。

実際MLBでは2022年よりゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞の両方にユーティリティ部門が新設されました。

 

リソースをどう配分してどう勝ちに行くか、という戦略ゲームみたいな面白さがあるのはMLBの特徴だと私は思います。

 

余談ですが、二刀流選手は投手登録しなくてもいいというルールがありまして、現段階ではほぼ大谷選手のためのルールではあるのですが、主軸打者としてチームを引っ張りながら試合で投げる、更にその分の枠は1枠でいいというのは編成上ありがたいなんてものでは済まされないレベルです。

もちろんあのレベルで投打に稼働できる選手が今後現れるかというと疑問ですがね。


■メジャー契約/マイナー契約

日本人選手がMLBに挑戦する際にも時折取りざたされますが、MLBには契約が2種類あります。

メジャー契約:先述の40人枠に入る

マイナー契約:40人枠に入らない

NPBで言うと支配下がメジャー契約育成がマイナー契約と思ってもらえると一番わかりやすいかと思います。

とはいえ40人枠に入った選手全員が莫大な金額を手にできるわけではなく、若手有望株なんかは一旦メジャー契約にして40人枠に入れはするものの、基本的にマイナーでプレーし、チャンスが来るのを待つといったこともあります。

若手の中でも、まだまだ時間がかかる選手はマイナー契約で40人枠には入れないですし、そろそろMLBでのプレーも見てみたい選手はメジャー契約扱いで40人枠に入れる、と言った形です。

 


■ドラフト制度

MLBのドラフトは、7月に実施されます。

対象:アメリカ・カナダなどのアマ選手(高校生/大学生/ジュニアカレッジ*1
指名順:弱いチームから(完全ウェーバー)
契約金:スロット制で管理

指名順は完全ウェーバーですが、ドラフト指名の最初6選手に関しては、ポストシーズンに出ていない球団からくじを引いて決めます。

その6選手が終わってから7選手目以降は完全ウェーバー制です。

 

また、契約金に関してもスロット制(ボーナスプール)というものがあり、 各球団に「契約金の総額上限」があり、球団ごとに総額の制約があります。

内訳について縛りはなく、1位指名の選手の契約金を思いっきり弾んでそれ以降はケチったりしても問題はありません。

指名した選手のうち、大半は1年目からすぐMLBでプレーすることはありません。

ポール・スキーンズ投手のようなごくごく稀にいる怪物は別ですが、基本はみなマイナー契約スタートになります。

そのため、NPBとは比べ物にならないほど「入団拒否」がカジュアルです。

実際、現在ソフトバンクでプレーしているカーター・スチュワート・ジュニア投手も高校時代にブレーブスから1位指名(全体8巡目)を受けましたが、契約金などで折り合いがつかずに入団拒否し、彼は日本でプレーする道を選びました。

MLBのドラフトは「戦力」を獲得する場というよりは、「育成する権利」を得る場という感覚です。

 

また、NPBにはない特別なルールも2つあります。

● 補償指名(Compensation Pick)
FA流出があった球団に対して追加指名が認められます。
● 競争均衡ラウンド
小市場球団に対して追加指名が認められます。

 

大体どの球団も20人前後指名し、うち15人ほどが入団してマイナーで研鑽を積むといった形になります。

なので、一部の選手以外は金額がバカ高いだけの育成ドラフトと思ってしまってもいいかもしれません。


■選手獲得手段

MLBはNPBとは比にならないくらい市場が大きく、選手の動きも活発です。

ドラフト以外での選手獲得手段についても書いていきます。

 

・フリーエージェント

NPBと違って宣言制ではなく、自動でFAになるのが特徴です。

また、人的補償や金銭補償もありませんので活発に選手が動きます。

フリーエージェントになった選手のうち、球団がクオリファイングオファー(QO)を出すことがあります。

クオリファイングオファーとは、MLBにおいてFAとなった選手に対し、前所属球団が提示する1年契約の制度です。

金額はメジャー年俸上位125選手の平均額(2025年は2200万ドル超)。

選手はこれを受け入れて残留するか、拒否して他球団と契約するかを選択します。 

もしこのQOを拒否して移籍した場合、所属元の球団は所属先からドラフト指名権を譲渡されます。

 

 

・トレード

トレードは日本でもありますが、MLBだとポストシーズン出場が難しい球団が主力を出して将来のために若手選手を複数人貰う、と言ったことが多いです。

逆も然りで、どうしてもポストシーズンに進出して勝負をかけたい球団が自前の若手を出してでも欲しい選手を取りに行くという動きもあります。

NPBはほどほどのリリーバーであったり、レギュラーになり切れない野手がトレード対象になりがちですが、かなり色が違うのが見て取れます。

 

・ルール5ドラフト

NPBでいう所の現役ドラフトで、制度としてはこのルール5ドラフトを参考にして作ったものです。

ただし、現役ドラフトはまだまだ粗い制度なのに対し、ルール5ドラフトは制度設計が堅く作られています。

 

・対象

40人枠に入っていないプロ入り5年目(18歳以下で契約)または4年目(19歳以上で契約)以上の選手。

・指名順

下位のチームから

・指名した選手の扱い

移籍金は10万ドル。

1年間通してロースターの26人枠に入れ続ける

もし、ロースターに入れ続けなかった場合は5万ドルで元球団に返却

 

となります。

そのため有望株で他球団に指名されたくない選手に関してはどうにかして枠を開けて40人枠に入れるといった動きもあります。

 

 

・DFAされた選手の獲得

DFAは要するに40人枠から外すという動きですが、元々40人枠に入っているだけあって実力的に考えても他29球団から声がかかる可能性は十分にあります。

NPBでも育成落ちを拒否して他球団に支配下で入団するという話は今や珍しくなくなりましたが、似たようなものだと考えると分かりやすいでしょうか。

 

・国際アマチュアFA

簡単に言うとアメリカ、カナダといったドラフト対象になる国以外でプレーするアマチュア選手を獲得するものです。

MLBのドラフトは7月に開催されるため、年度初めと年度終わりが異なる日本の高校生、大学生をその年の7月に指名するというのは不可能です。一応浪人すれば出来ると思いますが…

よくあるのは中南米系の有望選手の獲得です。

ドミニカのスーパースターであるタティスJr選手や、ベネズエラのカルトヒーローと言っても差し支えないセンザテーラ選手は国際アマチュアFAでMLB球団と契約を結び、メジャーリーガーとしての第一歩を踏み出しました。

 

・国外からの獲得

これは言うまでもなくNPBやKBOと言ったMLB以外のプロリーグの選手の獲得です。

ここは主にFAとポスティングになりますが、わざわざ書くほどの事でもないので詳細は割愛します。

 


■選手評価・年俸

MLBのトッププレイヤーは信じられないくらいの巨大な契約で高額な年俸をもらいますが、それは基本的にごく一部です。

MLBはFA権を取得するまでには6年かかります。*2

最初の若手時代はどれだけ活躍してもかなり安く年俸を抑えられます。

例えばドジャースのレギュラーセンターのパヘス選手は素晴らしい活躍ながらたったの77万ドルと、莫大な金額を手にしている諸先輩方に比べると極めて安いです。

そこからメジャー登録日数が3年以上6年未満になると、年俸調停権を手にして、成績に応じて年俸が挙がっていきます。

更に活躍して6年が経過してFAになると活躍度次第では超大型契約が見込まれる可能性もあります。

ただ、時にはFA前の若手を球団が超大型契約で囲う場合もあります。

大谷選手の10年7億ドル契約も凄まじいですが、今年からドジャースに加入したカイル・タッカー選手も4年で2億4000万ドルというとてつもない契約を結んでいます。

 

とはいえこういった高額年俸を受け取ることが出来る選手は勝利貢献度の高さ、いわゆる「WAR」が高い選手です。

打撃専で守備に難のある打者や、リリーフ投手で大きな契約を結ぶことはあまりありません。

実際、MLBで高額な契約をしたリリーフ投手で言うとエドウィン・ディアス選手で、3年6900万ドルですが、これもMLBのトップレベルの先発投手や野手と比べると幾分と安い金額です。

逆にコーナーポジションであってもちゃんと守れる選手*3には高額契約で報います。

そうなるとDHではあるものの守りという観点では投手という究極の守備者として稼働が見込める大谷選手が攻守ともに莫大な貢献をする、という見方はまさにその通りですし、天文学的な契約も理解できます。

 

■まとめ

NPBはNPBの、そしてMLBにはMLBの色があります。

どちらが正しい、間違っているというのはありません。

そもそも人口も違えば国土も違います。

でも私はMLBの制度を知ってみて非常に面白いと感じました。

NPBと比べるとより選手を「資産」として扱っているのがMLBだと私は感じます。

また、流動的な市場により、フロントが戦略的な動きをしやすいのもMLBです。

市場が閉鎖的ゆえに、球団のファンが選手個人単位にも思い入れを乗せやすいのはNPBで、それはそれでいいことだと思います。 

なんなら日本人の気質に合うのはそちらなのかもしれませんし、NPBにも十分慣れているのでその感覚は理解できます。

ただ、スポーツをビジネスとして捉えて戦略を立てていく面白み、その戦略を外から見ながら「ああでもないこうでもない」と勝手に考察させてくれるMLBもまた魅力的なリーグだと私は思います。

あまりリアルタイムで追いかけ続けるのは現実的ではない時間帯で試合が行われることが多いですが、MLBを軽く追っかけてみようと思いました。

 

*1:短大みたいな感じです。

*2:ただしNPBから移籍した選手は契約年数が切れた時点でFAです。なので今永選手は2年でFAになりましたし、村上選手も2年後にFAです。

*3:ゲレーロJr選手やジャッジ選手