唐突ですが最近ふと思うことがあります。
Jリーグという環境で持続可能な強豪チームを作るために必要なことは何か、ということです。
何をいきなり、と言われそうですが町田ゼルビアの躍進及び天皇杯優勝を見て感じることでして、ずっと頭にあったことをここで文字にしてしまおうではないか、というノリです。
■和式サッカー/洋式サッカー
便所かよ、ってなりますがこれ割と久々に使うワードだなぁと思っています。
簡単に言うと
後ろのビルドアップでDFラインが時間を作って前線に届ける、という作業を丹念にやり続ける。
守り方もただガムシャラにプレスで走り続けるのではなくそれぞれの選手が持ち場で分担しながら相手の攻撃をポイントで抑える。
このようなスタイルが洋式サッカーと呼ばれるものです。
選手が流動的に動き回り、相手が食いついた瞬間に裏へ通す縦パスで一撃を狙う。
あるいは、複数の選手が狭いエリアに密集し、混戦の中でも卓越した技術で活路を見いだす。
守備も全身全霊のプレスで相手を窒息させ切ろうという思想。
このようなスタイルは和式サッカーと呼ばれます。
この1年野球と相撲ばっか見てるのでだいぶ今の自分のサッカーを見る感覚が落ちている実感はありますのでご容赦ください。
この和式/洋式論争ですが、基本的に洋式を目指すべきだよね
みたいな印象はあります。
特に2019年のヴィッセル神戸の天皇杯優勝、横浜Fマリノスのリーグ優勝が転換点だと言われています。*1
実際多くのチームがチーム変革を新外国人監督に託して、爆散していきました。
この事象なんですけど、じゃあ新外国人監督チョイスが悪かっただけなのか?という話なんですよ。
そういうパターンもあると思いますが、それだけではありません。
要するに外国人監督の目線に立つと、Jリーグの選手の「出来る事/出来ない事」が今まで出会ってきた選手の常識と違い過ぎるという事です。
我々が中学生の家庭教師をやるとして、その中学生の子が分数すら出来ない、みたいな。
分数すら出来ない子に一から粘り強く分数を教え込むとすると、最初は結果が出ません。結果が出ないうちに首になってしまいます。
もしくは分数が出来ないけど他でカバーして誤魔化そうとなります。
そうするとせっかく招聘してきた監督の意味はありませんが、成績の見栄え自体は分数を教えるよりもマシなものになります。
育成年代でのサッカー文化が違いすぎて、いわゆる”洋式”サッカーに適合できる人材が限られているのが難しいところですし、一から教え込むと結局結果が出にくくて特にトップリーグだと待ってもらえないことが多いです。
選手側も適応できなかったり、時間がかかったりします。
また、そういった指導者はえてして「選手の負荷」を軽く見て、ある程度固定したメンバーでずっと戦いがちですが、それによる離脱者の増加や一部コア選手の疲弊は無視できないマイナス影響です。
■人材確保の難しさ
とまあつらつらと洋式サッカーと和式サッカーの話をしたところで、じゃあ誰がサッカーするんだっつったら選手なわけで、選手が適合しなきゃどんな崇高な理念も意味がないわけですね。
そうなった時に今のJリーグは
・外国人枠たったの5枠*2
・若くて優秀な選手はすぐ海外移籍
・若くなくても海外移籍
・何ならプロ入り前の新卒も海外でキャリアをスタートしがち
・2部や3部の逸材も1部をすっ飛ばして海外移籍
といったように人材確保に関しては超クソゲーです。
で、大体引き抜かれるのはフィジカル面で突出した無理の利く選手であったり、洋式サッカーに適合できる才能のある選手になります。
はっきり言うとJリーグはいつ欧州に行ってもおかしくないリスキーな選手と欧州を諦めた選手と欧州から見向きもされない選手とたった5人の外国人でチームを構成しないといけない超縛りプレーのもとでチームを作っていかないといけないわけです。
とはいえ、欧州から見向きもされない選手といったってある程度の質は無いとリーグ内でコンテンダーとして振る舞うことは出来ないわけで、中々に難しい舵取りを強いられます。
ただ、そうなると昨年・一昨年のヴィッセル神戸の連覇は非常に納得のいくものです。
欧州を諦めて帰国した大迫選手、武藤選手、酒井選手、井手口選手
欧州から声のかかることがないであろう佐々木選手、山川選手、前川選手
外国人のトゥーレル選手
一応欧州の可能性はあるのが宮代選手
このあたりがコアとなっていたわけで、非常に理に適ったチーム作りが出来ていたわけですね。
また、最初に話題に出した町田ゼルビアもこの点では非常に理に適ったチーム作りですね。
欧州の可能性があるのは現状望月ヘンリー海輝選手くらいで、あとは欧州から声のかからない選手、欧州を諦めた選手がコアとして座っています。*3
この辺の選手確保に関しても、洋式サッカーの難しさはそのサッカーを実現できる人間を何人揃えられるか、というところにあります。
ベストメンバーを組めれば良いサッカーができるけど、控えメンバーだとてんでダメ、どうしようもない、なんてのはよくある話です。
それでなくとも人材確保が難しいのに、控えメンバーまで人員を揃えられるのか、という話になってきます。
奇跡的にギリギリスタメン11人だけは洋式サッカーを体現できるメンツを揃えられました。
としても、過密日程に見舞われた場合、彼らをすり減らすか、どう考えても力の落ちる控えメンバーで型落ち・穴だらけの洋式サッカーをして勝ち点をボロボロ落とすしかないわけです。
■持続可能なチーム作り
やっていたサッカーが言うほど洋式かどうかはこの際別にして、欧州移籍というリスクイベントを踏まえずに、無邪気にいいチームを作ろうとしたのが2020~2021年の川崎フロンターレや2021~2022年の横浜F・マリノスでした。
結果両チームとも主力が次々欧州に移籍し、両チームともかつての輝きを失い再構築に励む日々となりました。
このクソゲー環境によって、皆が目標にしていた洋式サッカーは実現も難しく、運良く実現してもすぐ欧州移籍で崩壊してしまうというただリスクしかないものに成り下がってしまいました。
正直それでもリカルド・ロドリゲス監督の下で戦っている柏レイソルは非常に勇敢ですが、彼らの本当の試練は来年以降主力が欧州に抜かれ始めてからです。*4
逆に町田ゼルビアはやっているサッカーに求められる要件が非常に日本の環境と相性がいいため、移籍リスクはかなり小さく、とても合理的です。
まるごと町田ゼルビアのサッカーを真似する必要はないですし、それが上手くいくとは思いませんが、今のJリーグで強くなるために「洋式チーム」を目指す必要性が本当にあるのか、というのは考えておくべきかなと思います。
その「洋式チーム」は完成した日が終焉の日になります。
持続可能な強いチームを作るのに必要なのは"フットボール的に善い"サッカーじゃなくて、基本的な「サボらない」、「ひたむきに頑張る」ことを誰が出てもやり続けるチームを作る事なんじゃないかと思うわけです。
洋式に適合した選手は確保が難しい上に、その洋式部分が長けている分だけ他のデメリットがあります。
洋式への適合が低い選手は洋式要素がなくとも、他の強みを前面に活かせば十分輝けるので、無理に洋式タイプを取るより経済的で確保もしやすく、流出リスクも低いという事はあります。
勿論、あくまでJリーグという質の高い自国選手の確保に高いハードルが科せられているのに、外国人枠が狭いというとんでもない矛盾を抱えた異常環境での最適解であって、他国のリーグで同じことが当てはまるとは思いません。
なので、よく言われる「なぜビルドアップの構築も出来ないのか」であったりとか、「なぜもっと組織的なサッカーをしないのか」に関する解としては「そんな事したらチームが弱くなる」が適切でしょう。
海外サッカーから入ったサッカー好きからすると「なんだそれはふざけるな」と言いたくなるかもしれませんが、なんもかんもJリーグを取り巻く環境があまりに特殊でピーキーなのが原因です。
「適者生存」とよく言われますがまさにそれです。
勿論その流れにあらがおうとして結果を出しているチームは美しさを感じますが、その美しさは長くは続かないからこその美しさでもある、と私は思います。
戦術が重要じゃない、とは思いませんが、戦術よりさらに上の戦略の部分が大事であり、今のJリーグで戦略的にベストなソリューションは戦術と向き合いすぎないことだと私は考えています。