育成大量指名について

こんにちは

定期的に出てきている話題だと認識しているのですが、ソフトバンクホークスがよくやり玉に挙げられる「育成大量指名」について、多くのファンがそれぞれ意見を交わしています。

個人的にどう感じているのか、ちょっとまとめたいと思います

ただ、これも時間が経つとまた考えが変わるかもしれないなとも思っています。

 

■育成選手の保有

支配下選手は70人と決まっていますが、現状育成選手の保有に関しては何の制限もありません。

ちなみに2025シーズン終了時点の各球団育成選手の人数は下記です。

 

福岡ソフトバンクホークス    51人
読売ジャイアンツ    35人
埼玉西武ライオンズ    23人
オリックス・バファローズ    21人
千葉ロッテマリーンズ    17人
横浜DeNAベイスターズ    15人
北海道日本ハムファイターズ    14人
中日ドラゴンズ    13人
阪神タイガース    12人
東京ヤクルトスワローズ    10人
広島東洋カープ     9人
東北楽天ゴールデンイーグルス    8人

 

三軍を持つジャイアンツやライオンズも多いですが、ホークスは更に図抜けています。支配下70人に育成10人前後の球団と、育成50人前後の球団では単純に選手の総保有数が1.5倍違うというのは事実としてあります。

 

■都合よく使われる”育成”枠

これはソフトバンクホークスだけでなく、各球団当たり前のように行っていることなのですが

・大きめの怪我(トミージョン手術など)をした選手

・著しく二軍成績が苦しい選手

なんかをカジュアルに育成枠に落とすことが多いですよね。

 

球団側の論理からすると、支配下枠が限られている以上丸1年リハビリに費やして1軍で投げる可能性がない投手だったり、二軍でまず自分を取り戻せるかどうかが問題で一軍なんて目指している場合じゃない選手に枠を割く余裕なんてない、というのは分かります。

 

私自身、特に前者の事例に関してはNPBの制度設計の怠慢という面は非常に大きいと思っていて、MLBでやっているような故障者リストの導入は検討すべきではないかと思います。

 

また、成績不振者の育成落ち(やイップスになった選手の育成落ち)もよくある事例ですが、ここはまた違う問題だと思っています。

勿論翌シーズン中に一軍戦力になる可能性が極めて低い選手に対して支配下で契約するのは非効率的と言わざるを得ないですが、本来の”育成”という目的とは違っていて単純に”保有できるけど支配下枠を喰わない”便利な扱いに見えます。

 

ここに関してはどちらかというと「支配下枠が少なすぎる」のも問題に思います。

 

昔の野球と比べてレベルが上がりましたが、人体がそれに耐えうるかはまた別問題でして、特に投手に関しては著しく消耗するようになっています。

それなのに、1992年*1と同じ基準の支配下枠というのがそもそも間違っているのではないでしょうか。

野球の質の変化に対応していない制度設計の元で戦うがために、育成枠を都合よく使わざるを得ないのは球団の責任かと言われる個人的には違うんじゃないかなと思っています。

 

■アマチュア野球のレベル低下

これは元千葉ロッテ里崎氏が自身のYoutubeチャンネルで発言していたことでもあります。

www.youtube.com

 

端的に言うと

「これまでならプロに行かずに大学に進学したり、社会人に進んでいたような選手が育成で指名されることで、アマ野球に入ってくる人材の質が落ちて、回り回ってアマ野球全体のレベルが落ちてしまう可能性がある」

という意見です。

そこに関して全く分からないわけではないです。

仁川学院高校の佐藤輝明君(18)や松本第一高校の牧秀悟君(18)が育成でプロ入りしていたら今頃どうなっていたのか、というと今よりいい未来があったとはちょっと考えにくいところはあります。

 

今は毎年40~50人強の人材が育成ドラフトを経てNPB入りするわけですが、アマチュア野球界全体で毎年獲得する人材と比べるとどれほどのものか、というのは思います。

例えば、全日本大学野球連盟の公式サイトを見ると、日本全国の大学野球部に入部する野球選手が1年で8000人強です。

 

www.jubf.net

 

正確なデータはありませんが、毎年独立リーグに入団するアマチュア選手や社会人野球に進むアマチュア選手の数もそれなりにはいることでしょう。

そう考えると、最大50人前後*2のアマ選手の育成指名でアマチュアの人材が枯れる、というのはちょっと言葉が強すぎる気もしています。

 

■若い選手の使い捨て

また、よく言われるのはこの若い選手を使い捨てるような形の雇用になってしまうのではないかということです。*3

 

選手が自分の意志で入団しているのは百も承知ですし、一人の大人の判断だろうというのはそれもその通りだと思います。

それはそうとしても、プロの世界が厳しいこと、特に育成枠で入るととんでもない競争に晒されることについてちゃんと現実感を持って認識している選手がどれだけいるか、は結構怪しいのではないでしょうか。*4

 

当たるも八卦当たらぬも八卦で大量に若い選手を安くかき集め、数打ちゃ当たるで成功した選手にフォーカスを当て、成功しなかった選手はあっさり切られるのは非常に厳しいとは思いますが、セカンドキャリアをちゃんと用意しているだけまだ多少は恩情を感じますが、逆に言うと高卒で育成選手を取るなら最低限セカンドキャリアの支援は必須くらいには思います。

それが出来るならまだ許せますが、高卒2年3年で育成選手を切ってセカンドキャリアの面倒も見ないというのなら流石に厳しさの中にあると言わざるを得ません。

 

■戦力均衡について

今度は選手やアマ球界ではなくNPB目線で語ります。

先述のように育成選手の保有数には上限がなく、球団によって大きな差があります。

育成選手はプロ入り段階では支配下選手に比べて非常に荒削りであったり、欠点も多かったり、実績が無かったりすることは多いですが、それでもそんな育成選手を10人、15人抱えているチームと50人抱えているチームとではそこから出てくる選手に差があるのは当然です。

プロ野球は一応建前として戦力均衡を目指しています。*5

所詮建前ですが、果たしてこれでいいのか、戦力均衡の思想に反するのではないか、というとその可能性は大いにあります。

個人的には全球団3軍は保有しましょうよ、くらいには思っているのですが、それはそうとして戦力均衡というお題目を形だけでも掲げている以上、この育成保有問題に手を付けないのはちょっと筋が通らないのではないかと感じます。

育成枠は最大〇〇人、みたいにしておくくらいのルール制定はあっても良いでしょう。

戦力均衡自体が意味ないというならドラフトなんてするべきじゃなく、Jリーグみたいに新卒獲得が完全に自由競争になるわけですが、それをお望みですか?*6

 

■個人的な意見

私の個人的な育成大量指名に関しての意見は下記です。

●制度上の問題

支配下枠がそもそも少なすぎるので増やすべき。

支配下枠、育成枠とは別で故障者リストを用意すべき。

●アマチュア球界への影響

・育成指名によるアマチュア球界への悪影響は現状無視できるくらいの影響である。

●若い選手のキャリアについて

・選手本人のチャレンジ意欲は止められない。せめて球団は高卒の育成選手だけでもセカンドキャリアを用意して面倒を見るつもりで指名すべき。

●戦力均衡について

・曲がりなりにも戦力均衡を謳っている以上、現状の育成選手無制限保有は好ましくない。保有人数は上限を決めるべき。

*1:支配下70人と制定したのが1992年です

*2:しかもその内、そこそこの割合でラストチャンスの独立リーガーもいるわけです

*3:ここは支配下で指名した選手を2年で育成契約にする、みたいな流れも込みですが。

*4:もっとも、そこで「自分なら出来る」と強い自信をもってない選手はそもそもプロの世界に飛び込まないのでしょうけど。

*5:とはいえMLBほど露骨ではありませんが。そもそも阪神が立石選手を指名できる時点で戦力均衡どうなのよってのはそう。

*6:まあ戦力均衡の割にドラフトの1巡目はくじで公平に決めるし、その後もウェーバーと逆ウェーバーの繰り返しじゃんか、ってのはそうですね。