現代野球の基礎知識

こんにちは

早速ですが、野球という競技は近年データ化が著しいです。

プロでなくとも、愛好家であっても簡単にデータに触れることができます。

とはいえ色々なデータがありすぎてとかく分かりにくい、という意見も耳にします。

そのため、今回は現代野球における基礎知識(と私が思っているもの)を並べて、説明していければと思います。

 

■投手編

・先発とリリーフの価値の違い

これは結構言われていることでもありますが、やっぱり先発の方がリリーフより価値は高いです。

ここに関してはデータ云々より、チームにおいて先発ローテ投手が年間で150イニング前後投げるのに対し、リリーフ投手は年間で多くても60イニング強ほどに収まることが多いわけで、シンプルに年間消費しないといけない投球イニングのうちより多くを占めるのが先発だからこそ、先発のほうが重要というだけの話です。

おそらく2005年のJFK以降、リリーフの重要性や「勝利の方程式」というワードが強く言われてきて、それ以降各球団リリーフを重要視するようになっていきました。

ただ、そのリリーフ重視の風潮が行き過ぎて、本来なら先発で長いイニングを消化したほうが貢献度が高くなるような投手をリリーフで使い倒してしまう、という事例も見られるようになっていきました。

そのような逆転現象が起きているのはおかしな話ですし、やはり基本は先発に能力の高い投手を集める、というのが基本になるでしょう。

もちろんリリーフが脆弱ゆえに接戦時の7回や8回に打たれて負けてしまうのは見ていて最もストレスがたまる負け方の1つですが、じゃあリリーフを強くするぞといって先発の主軸をリリーフに回すと、そもそもリリーフまで繋ぐことすら出来なくなるので、より勝ち星を減らしてしまいます。

一番大切なのはチームの勝ち星の総量を可能な限り増やすことですので、リリーフを必要以上に重視するのではなく、あくまで先発投手に対して優先的にリソースを割くべき、というだけの話になります。


・アウトの質の違い

アウトはどのような形であれアウトですが、投手の力量を図る上ではアウトの質も気にします。

最良のアウトは三振

その次が内野フライ

その次が内野ゴロ

そしてライナーおよび外野フライと続きます。

三振は基本的には確実にアウトになるため、投手が取れるアウトの形としては最良ですし、だからこそ三振が多くとれる投手は力のある投手、価値の高い投手と評価されます。

その次は内野フライで、これも三振ほどではないですがほぼ確実にアウトになるといっていい打球のため、投手からすると完全に”勝ち”と言っていいでしょう。

ただし、内野フライは再現性が低い部類の打球なため、あまりこれを用いて投手を評価することはありません。

内野ゴロは転がった場所次第で安打になりますし、守備側のエラーという可能性もあるため、前者2つほど確実にアウトが取れる打球ではありませんが、のちに説明する外野フライやライナーと比べると被得点の期待値はかなり低い打球ですので、ゴロが多い投手も比較的高く評価すべきだと考えられています。

最後にライナーおよび外野フライですが、これはアウトだったとして打者に上手く打たれた打球とみることが多いです。*1

守備側の好プレーや、たまたま守備者の正面に打球が行ってしまったことでアウトになったとしても、もしちょっと場所が違っていたら…ということになるので、投手のアウトの取り方としてはあまり評価されないことが多いです。

 


・参考になる指標、なりづらい指標

投手の力量を図る上で参考になる指標、さほど参考にならない指標があります。

まず旧来の指標でいくと勝ち星は当然投手の力量に何の影響もありません。

防御率も全くあてにならないという訳ではありませんが、実は正確に力量を図れる指標とは言い難いです。こちらは詳しく説明します。

そして、奪三振は他の2つと比べると頭一つ抜けて力量を表せる数字です。

勝ち星が投手の力量を測る際に参考にならないことは特段説明する必要もないとは思いますので割愛します。

防御率は一見投手の力量を図るうえで有用な数値に思われがちですが、そもそもアウトを取れるかどうかは味方の守備陣の力量や球場の広さによる部分もありますし、打球が飛んだ方向や運に左右される側面もあります。

もちろん勝ち星などと比較すると遥かにマシではありますが、とはいえ参考程度でしょう。

奪三振は投手が取りうるアウトの中で最良の手段であるため、奪三振が多い、対戦した打者の中で奪三振でとったアウトの割合が多い投手は優秀と考えて間違いは無いでしょう。

では現代野球ではどういった指標を見ているのでしょうか。

大きくは

・K%

・BB%

FIP/tRA

あたりになります。

 

・K%

これは単純で、「対戦した打者のうち、どれだけ奪三振を奪えたか」という数字になります。

計算式は

奪三振数/対戦した全打者数

になります。

ざっくり

先発だと20%を超えると比較的優秀、25%を超えるとトップクラス

リリーフだと25%を超えると比較的優秀、30%を超えるとトップクラス

です。

 

・BB%

これも単純で、「対戦した打者のうち、どれだけ四球を与えたか」という数字になります。

計算式は

総四球数/対戦した全打者数

になります。

四球は安打と違ってある程度投手自身の力でコントロール出来るもの、とされているので当然ですが少なければ少ない方が評価は高くなります。

先発・リリーフ問わず5%以下だと優秀と見て差し支えありません。

 

FIP/tRA

詳細の説明は下記にガッツリ書いてありますので、詳しく知りたい方はアクセスしてみてください。

FIP

1point02.jp

●tRA

1point02.jp

 

簡単に言うと投手の責任範囲を

奪三振

・四球

・被本塁打

のみに絞って、それぞれの数字をもとに貢献度を算出するのがFIP

FIPに加えて打たれた打球の質(外野フライなのかゴロなのかライナーなのか)も計算に加えて貢献度を算出するのがtRA

です。

 

先述の通り、安打は味方野手の守備能力であったり、飛んだ打球方向の運にも左右される側面があるため、今はこういった形でデータを取ることが多くなっています。

 

 

■野手編

・守備位置によって異なる選手の価値

全く同じ打力、同じ走力で守備も相対的に見れば全く同じな2人の選手がいて

片方は遊撃手、片方は左翼手

どちらが選手の価値が高いか、というと前者に軍配が上がります。

一軍レベルの遊撃を破綻なく守れる選手は多くなく、破綻なく守れるだけで存在価値があるというわけです。

それに対して一軍レベルの左翼を破綻なく守れる選手は掃いて捨てるほどいます。

大袈裟ですが外野未経験の選手であっても持ち前のフィジカルである程度何とか出来てしまうポジションでもあります。

基本的には

捕手>遊撃>二塁手中堅手三塁手右翼手一塁手左翼手指名打者

という順番(多少の際はあれどざっくりこの順番)で価値があります。

もちろん左翼手であってもソフトバンク近藤選手のように圧倒的な打力、同じ左翼手としては傑出した守備貢献があれば総合的な価値も高まります。

比較的ファンからやり玉にあげられがちな阪神の梅野選手、確かに近年の成績は極めて厳しいと言わざるを得ませんが、最低限一軍の舞台で破綻なく捕手を務められるという時点で最低限の貢献は出来ている、という見方がセイバーメトリクスにおいては一般的です。

このように選手の価値は走攻守に加えてポジションによって異なる、という思想で野手を評価するのが現代野球の特徴の一つです。

 

・打撃能力を測るうえでの重要な指標

投手の時と同じように、打者の得点創出能力を測るうえでは旧来の指標はあまり当てになりません。

・打率:安打は打球の質を問わないため、単打やゴロばかりの高打率を評価することは出来ない。

本塁打:多ければ多い方が良いですが、本塁打が少なくても得点創出能力の高い選手はいます。

・打点:周囲の打者に影響される数字のため、打点が多いことは打者の能力と何の関係もありません。

 

ではどのような指標を使って打者の能力を見るかというと、wRC+という指標です

wRC+

1point02.jp

簡単に言うと、その選手が打席に立った時の得点創出能力を表す指標で、100を平均とした数字です。

150を超えてくるとかなり優秀で、200を超えるともう数年に1度レベルのえぐい成績です。

逆に80を切ってくると余程守備走塁が傑出していないとスタメンで使うのはちょっとなぁ…といった形です。

この数字は球場補正も考慮しているため、例えばバンテリンドームがホームの中日の選手と神宮球場がホームのヤクルトの選手とでは見栄えの数字が違いますが、このwRC+は球場補正も考慮しているため、それぞれの球団の選手の力量をきっちり見ることのできる数字です。

一般的にNPBが公開している数字ではなく、個人の有志が算出しているかもしくはDELTA社の有料データになるので、一般層が触れることが少ないデータではありますが、打者の力量を見るうえでは一番当てになる数字だとされています。

 

 

・打球の質

これは投手編で書いたことともかなり重なりますが、打者にとってもより評価される質の打球と評価されない質の打球があります。

外野フライやライナーが多い打者は得点を稼ぐ期待値が大きい打者と言えますし、ゴロが多い打者はたとえ打率が高かろうと前者ほどの評価にはなりません。

結局のところ現代野球においては打者がどれだけの得点を稼げるか、という期待値を強く見られており、よりその可能性が高い打球を量産できる打者がそのまま価値の高い打者となります。

かつての野球は転がせば何かが起こる、という考えが根強かったです。

今は転がして何かが起こる可能性と何も起こらない可能性、またフライを上げて点が入る可能性と入らない可能性(その副産物でもある三振含め)を天秤にかけたうえでフライを上げた方がトータルの得点期待値は高い

という結果も出ています。

多くフライを上げられる打者、ライナー性の強い打球が多い打者と、ゴロが多い打者とでは見栄えの打率や本塁打、打点が似通っていても評価は異なります。

 

*1:とはいえさほど打球速度の速くないハーフライナーや弱い外野フライといった例もあるにはありますが。