壊れた天秤

こんにちは

今シーズンのJリーグでも多くの選手が海外移籍を果たしています。

町田の平河選手やFC東京松木選手など、これからの日本代表の中軸になっていく可能性のある選手たちもいれば、広島の川村選手やセレッソの毎熊選手のようにすでに代表歴がある有力選手も海を渡っています。

ただ、私はその中でも広島の大橋選手の移籍を見てどうしても思うことがありました。

 

■聖域のない海外移籍

大橋選手は今年28歳の中堅と呼ばれる年代の選手であり、これまでの海外移籍のように「若いから将来性や転売益も込みで獲る」のではなく、明確に直ぐ使いたい即戦力としての移籍となります。

最近だと2024年開幕直前にこれもまた27歳の西村選手が移籍をしましたが、彼は元々海外経験があったことや彼自身のプレースタイルをある程度把握していたヴァイラー監督が指揮を執っていたことも大いに関係していたと思います。しかも期限付きでした。*1

 

ですが大橋選手は異なります。

シンプルにJでのパフォーマンスが評価されて、特段の縁もないブラックバーンへの完全移籍となります。

大橋選手は年齢のみならず代表歴もなく、これまで招集を含めて代表に絡んだことすらありません。

国内キャリアで見ても、湘南在籍時の6年間は怪我に悩まされることも多く、きっちり稼働して結果を残したのは昨年の1年だけでした。

これまでならどう見てもJでキャリアを終える典型でしょう。

 

これは選手個人単位で見ると非常に夢のある話。

代表に縁がなくとも、30手前まで目立った活躍をしなくとも、1,2シーズン跳ねたら欧州クラブへの移籍ができる時代。

しかも言っては何ですがスコットランドの2強以外だったりとか、ベルギーやオランダの2部などではなく、イングランドのチャンピオンシップです。

普通にベルギー1部やオランダ1部から移籍するにしてもステップアップと呼んで差支えのないレベルのリーグに行けてしまう事例が出来たわけです。

これまでは「俺はもう年齢で弾かれてしまう。海外に行きたいならMLSかアジア、金稼ぎなら中東にでも行くしかない」くらいに思っていた層が色めき立ちます。

 

しかしクラブとしては、そしてサポーターとしては大変な時代になります。

せっかく獲得して、今後数年のコアにしていきたいと思っていた選手が在籍半年や1年ほどで海外に行かれるのだからたまったものではありません。

広島がどれだけ想定していたか分かりませんが、年齢を考えても欧州へのステップアップありきで獲得した選手ではなかったはずです。

むしろステップアップありきで28歳の選手獲得してたらあまりに山っ気が強すぎる。

そうなるともう30歳を過ぎたベテランを積極的に獲得するしかないのですが、現実的に考えてそんなベテランばかりのチームは世代交代のかじ取りがあまりに難しいですし、簡単じゃありません。

どんな選手であっても海外移籍のリスクを念頭に置いて編成しないといけないとんでもない時代になってきています。

 

■歪な力関係

私自身はこの大橋選手の移籍については「この年齢、このキャリアの選手がチャンピオンシップ行けるとはえらい時代になったもんだ」と思いましたが広島サポーターではないので賛も否もありません。

「半年しかいないのに海外行くなんて!」という意見も別にわからないではありませんし、「アラサーの選手をステップアップさせられたのは今後につながる!」というのもそれはそうかもなんて思います。

 

ただ、この大橋選手の移籍報道を見た時に、私は「欧州移籍回りの選手(+代理人)とクラブとの力関係おかしくない?」と思いました。

簡単に言うと、選手の欧州移籍希望についてクラブが簡単に呑みすぎ、ないしは呑まざるを得ない状況になりすぎている気がしてならないです。

もっとクラブ目線(サポーター目線)の言葉で言うと「夢のため、キャリアのためを大義名分に選手側がクラブに対して甘えすぎている」ように感じます。

 

大橋選手は在籍期間はまだしも移籍金は結構貰えるそうなので、獲得時フリートランスファーだったことも考慮すればまだ許容できるかもしれません。

ただ、もっと安い金額での移籍が成立したり、期限付きでの移籍が横行しているのはどうしても気になります。

どこまで本当にやっていることか分かりませんが、クラブ側も有力な選手を獲得するために「欧州からのオファーが来た時に優先的に話を通す」なんていう契約を結んでいたりもするみたいですね。

でもクラブ側からしたらそうでもしないと来てくれない、契約を結んでくれないわけですから仕方ない流れです。

ここに関しては現実的ではないですがリーグが音頭を取って「海外移籍に関しては優先するような条項を入れない」など取り決めをするくらいしないと流れは変わらないでしょう。

 

本当であればそんなことが起きているのはおかしな話ですし、選手側も代理人もちょっとは考えて動かないと巡り巡って本来自分たちのキャリアの基礎を作ってくれるはずのJクラブの首を絞めているだけだと気づくべきでしょう。

もちろん欧州クラブにも欧州クラブなりの論理はありますし、彼らからしてもJでしか実績のない選手、代表歴があってもその大半がアジア諸国や親善試合しかない選手にどれだけの値札をつけるべきか、というところで高い値段で買いに行きにくいのはわかります。

我々がどれだけ「いい選手だ」と思っていてもそれを証明する手段、サンプルが乏しい選手はどうしてもそう言った評価を受けてしまうのは事実です。

高い値段をつけさせるには、極めて高いハードルがあるのは間違いありません。*2

なんなら単純な金額で見れば大橋選手はかなり評価をされたほうとも言えます。*3

せめて極端な安売りやあまりに選手に有利すぎる条件を結ばせるようなことだけは防ぎたいと思いますし、そうでもしないとJリーグのチームはやっていけないでしょう。

とはいえ、このまま何も変えないならこの流れは止まらないでしょう。

 

■テコ入れ案

秋春制にすることで大きく変わるか、と言われるとそれもまた難しい話でしょう。

欧州の移籍市場は夏も冬も大きく動いています。

シーズンを合わせたところで大した意味はありません。

 

クラブ側、リーグ側がやることは「選手の強すぎる立場」をナーフすることです。

 

ではなぜ有力な日本人選手がここまで力が強いのかというと、そういった選手たちを中心に据えて戦わないとタイトルが狙えないからです。

もっと言うと「外国人枠が5」であることで、それ以外を日本人選手、もしくは提携国枠の選手で埋めきらないといけないことが編成を難しくしているのです。

 

だから、私は外国人枠の大幅緩和を提案したいです。

それこそ「日本人選手の登録枠を15」にして、それ以外を外国人選手で埋めてOKにします。

そうすると、海外移籍の要望がうるさい日本人選手たちにわざわざ媚びへつらって彼らに有利な条件で契約せずとも、外国籍選手を連れてきて主力にしてしまえばいいのです。

もちろん外国人選手にだって移籍のリスクはありますが、外国人選手はより「出稼ぎ」の意識が強いため、日本人選手のように「安売りしてほしい」とクラブに甘えることはないです。

実際、近年Jリーグから中国や中東、MLSに移籍した有力外国人選手たちを見ても、かなりの移籍金をクラブに残しています。

例えばですがJで見てもレオ・セアラ選手やアンデルソン・ロペス選手、ダワン選手などは日本代表クラスが欧州に移籍するよりはるかに高い金額で売れるのではないかと私は思います。

JのクラブがACLで戦えるために秋春制にするというのであれば、外国人枠から変えていただかないと筋が通らない、とも私は思います。

 

こうなると「外国人ばかりのクラブを応援できるか」という議論になりますが、安い金額でさっさと欧州に行きたい腰掛け日本人ばかりのクラブより私は推せますね。

むしろ日本のサッカー環境では中々出てこないタイプの選手を枠を気にせずに獲得できるのならそんな愉しいことはないでしょう。

とそんなことを思っています。

*1:なんなら帰ってきました。そんなことあるんかい

*2:こうした移籍の話が上がるたびに、2021年夏にセルティックに移籍した古橋選手が引き合いに出されますが、彼は神戸が過去に欧州のオファーを断っており、神戸も手放す気は全くなかったでしょうし、そのような契約、それなりの年俸をもらっていた中で、古橋選手の実力を熟知していてなおかつ欲しいものは何としても手に入れたい厄介わがままおじさんのアンジェ・ポステコグルーが金持ちクラブのセルティックに口添えをした極めてレアで偶然が重なった案件で、普通に考えてあの再現は無理です。事実それ以降の神戸の海外移籍は0円でセルティックに移籍して戦力外状態の小林選手と、二束三文でハーツに移籍した小田選手だけです。神戸は高く売るノウハウなんて持っていなくてたまたまポステコグルーのステップアップと欲しがりグセに乗っかれただけの僥倖が高額ディールを生み出したのでしょう。

*3:契約期間は長く残っているでしょうから、その分もあるとは思います。