横浜Fマリノスが杉本健勇選手獲得に込めた狙い

こんにちは

私です。

 

ブログ書くネタをゆっくり探そうと思っていたら、3/21の朝に驚きのニュースを目にしましたので、そのことについて書いていこうと思います。

杉本 健勇選手 期限付き移籍加入のお知らせ | ニュース | 横浜F・マリノス 公式サイト

このニュースに関する反応がマリノスサポーターと他サポーターで正反対で面白かったです。*1

 

杉本選手の経歴は今更語るまでもないでしょう。

2017年にキャリアハイとなる22得点をたたき出し、次世代の代表エースを期待された杉本選手ですが、翌年は5得点とさみしい結果。

そのシーズンオフに浦和レッズへ移籍するも期待を全力で裏切り、挙句月額2980円のファン向けサイトを開設してしまう始末。

ポテンシャルは期待されつつも、いまひとつインパクトも結果も残せておらず、プレー面以外で話題を振りまくなどJリーグ界隈で屈指のネタキャラのような扱いになっていました。

そんな杉本選手がマリノスでプレーをしたのは1年半前。2021年の夏でした。

期限付き移籍マリノスにやってきた杉本選手は限られた出場機会ながら3ゴールを記録。*2

多少不器用ながらもまじめにプレスをかけ、ボールをキープしてひたむきにプレーする姿は多くのマリノスサポーターから愛されるには十分でした。

その後磐田への期限付き移籍、完全移籍を経ての今回の期限付き移籍

どういった意図をもっての獲得なのか、あまりピンとこない方もいらっしゃるかとは思いますので、順を追って話していきます。

・2023マリノスの前線台所事情

当然ですが現在30歳のベテランに差し掛かりつつある選手を獲得するのですから、その移籍の裏には当該ポジションに穴がある可能性が極めて高いです。

実際にCFおよびOMFについて現有戦力と出場時間を比較していきます。

CF

アンデルソン・ロペス リーグ5試合425分 ルヴァン1試合45分

植中朝日 ルヴァン1試合45分

村上悠緋 公式戦出場なし

OMF

西村拓真 リーグ5試合415分 

マルコス・ジュニオール リーグ5試合49分 ルヴァン1試合90分

榊原彗悟 公式戦出場なし

吉尾海夏 公式戦出場なし

ご覧になった通り、現状監督首脳陣より戦力と見なされているのは

アンデルソン・ロペス選手、西村拓真選手、マルコス・ジュニオール選手のたった3人なのです。

そのため、薄い層をカバーするために杉本選手を獲得することが必要だというわけです。

 

・試合に出られていない若手、中堅選手について

上記の台所事情からも分かるように現状攻撃的なポジションで試合に出られていない、戦力としてまだカウントされているとは言い難い若手、中堅選手が複数人在籍しています。

そこで安易に杉本選手獲得に動くのではなく、若い選手たちの序列を半ば無理やり気味に引き上げてでも使えばいいじゃないか、という意見があるのは理解できます。

特に長崎から加入した植中選手は期待値も高く、「もっと使ってくれよ」という声もよく聞かれます。

無論今の序列など如何様にでも変わるものですが、序列を変えるためにはただ闇雲に試合に出せばいいのではなく日ごろの練習でのアピールが不可避ではないかと思います。

また、中途半端にハマっていないまま優先的に起用されてプレーがおかしくなるより、ある程度練習を繰り返し、やり方を仕込んで「これなら期待できる」と思わせてから試合に出るほうがやはり実りは大きいのではないかと思います。

若いから、期待値が高いからという理由で下駄を履かせて半ば無理やりポジションを与えて果たして選手がまっとうに育つのか、私としては甚だ疑問です。*3

若い選手にとっては厳しい言い方になるかもしれませんが、J1でここ何年もまとまった得点をとれているわけではない杉本選手の壁を自力でぶち破れないようじゃどっちにしても厳しいでしょう。

今の若手たちが仕上がるまで、ロペス選手一人がフル稼働していてはいずれどこかでパンクしてしまうのは明白です。

そこでやり方を知っていて、計算が立つ杉本選手に白羽の矢が立ったと言えるでしょう。

 

・CF2番手としての立ち位置

現エースのロペス選手はJリーグ屈指の実績、実力を持った選手です。

そんなロペス選手と真っ向から争うことになるCFのポジションで来てくれる選手などそう多くありません。

しかも下の世代には植中選手も控えています。

そんな中で自らの立ち位置、過去の経験などを考慮した時に非常に「丁度いい」選手が杉本選手だったという見方もできると思います。

編成というのは優秀な選手をパラメータ順に並べればいいわけではありません。

選手も人間です。出場機会や年俸など様々な要素が絡んできます。

そんな中で3月の時期にギリギリ駆け込みでもロペス選手の負荷軽減のために頼ることができる選手、なおかつロペス選手の控えでも問題ない日本人選手と考えると選択肢が極めて限られることは自明でしょう。

 

・杉本選手の特性とマリノスの前進との親和性

杉本選手の強み、それは空中戦の強さと献身性でしょう。

献身性を示すデータを出すのは難しいですが、空中戦については気になるデータがありましたので下記に示します。

2022年シーズンの空中戦勝率*4

*5

ロペス   48.9%

西村拓真  41.6%

レオセアラ 37.3%

植中朝日  40.0%

杉本健勇  63.6%

上記のデータでも表したように杉本選手は現有戦力、また昨年まで主戦力だったレオセアラ選手と比較しても圧倒的に空中戦に強く、起点になることができます。

その杉本選手の特性は前進の手段としてCFを多用する今シーズンのマリノスにとっては非常に有り難いものであることは間違いないでしょう。

先日の札幌戦でも、札幌の屈強なストッパー岡村選手がロペス選手を封殺していましたが、さらにエアバトルに強い杉本選手を起用するという選択肢が取れるようになれば、これまで以上に選択肢は増える可能性があります。

 

・先を見据えた1手

そして最後にお伝えしたいのがこれは私の意見ですが、今回の杉本選手の獲得は今シーズンにとどまらず来年以降を見据えた1手だと考えています。

おそらく今シーズンの序盤はロペス選手を主戦にし、杉本選手が基本的にバックアップを務めることになるでしょう。

時には西村選手のポジションを杉本選手が務めることも十分想定されます。

ここで植中選手、村上選手を「早急に戦力として使わざるを得ない」という事態を防ぐことが出来るのが重要です。

そして一年ないしは半年をかけて若い2人を見極めることは、ACLも割り込んでくるシーズンの佳境に向けて準備を進めることにもつながります。

更に言うと、今の移籍市場では何が起きるかわかりません。

代表にも招集されている西村選手には海外クラブからのオファーが来る可能性は否めませんし、ロペス選手も同様に他国のリーグからお誘いが来ないとも限りません。

また1年間見たうえで、マリノスでは出場機会を十分に与えることが出来ないかもしれないと判断された植中選手、村上選手の期限付き移籍ということも考えられます。

逆に西村選手もロペス選手も残留し、なおかつ植中選手も村上選手もバチバチに仕上がって全員残留する可能性だってあります。

様々な可能性が考慮される中で期限付き移籍の杉本選手は他の選手の去就を見てから編成に加え入れることも可能であるため、チーム編成上非常に有難い存在になるでしょう。

 

そんなわけで杉本選手がマリノスに加入した理由をつらつらと語ってまいりましたが、最後にいちサポーターとして彼の躍動を願ってやみませんし、大いに期待しております。

今回もお読みいただきありがとうございました。

*1:当然ですが多数のマリノスサポーターは歓喜の声を上げ、他サポは困惑とも嘲笑ともとれる複雑な反応でした。そりゃそうだ。

*2:ちなみに332分出場で3得点のため、相当高い得点率でした。

*3:具体例を挙げるつもりはありませんが、優先起用の末に期待ほど育たなかった選手なんて各チーム各国見渡せば幾人もいますよね。

*4:ロペス選手、杉本選手、レオセアラ選手、西村拓真選手はJ1、植中選手はJ2のデータです

*5:https://www.jleague.co/stats/players/j1/2022/all/aerial_duel_win_rate/all/